研究課題
本研究の目的は、脳が状況に応じて筋シナジーをどのように調節しているのかを、計算論的に明らかにすることである。特に、筋活動パターンの基底をなす筋シナジーは、強化学習と呼ばれる試行錯誤的な学習を通じて獲得されると言う仮説を設け、その仮説を検証するための計算機シミュレーションや計測実験を行う。昨年度は、筋シナジーやそれらの活動強度の適応過程を観測するBergerら(2013)の仮想手術タスクと呼ばれる運動課題を計算機上で再現する運動学習シミュレーションのためのプログラムを開発した。本年度は、昨年度に開発した運動学習シミュレーションを用いて、強化学習アルゴリズムを用いて仮想手術タスク中に適切な筋シナジーを獲得できることを計算機上で確認した。また、Barradasら(2018)が行った仮装手術課題にも着目し、筋肉のモーメントアームが突然大きく変わる実験条件と少しずつ段階的に変わる実験条件における筋活動の変化の特徴を再現することを強化学習アルゴリズムを用いた運動学習シミュレーションによって試みた。その結果、前者の条件では筋活動パターンの分布が非等方性に、また後者の条件では等方性に近い分布を保つという実験結果の特徴を再現できることを確かめた。以上の結果は、筋シナジーが強化学習と呼ばれる試行錯誤的な学習を通じて行えることを示唆しており、適切な運動を生成するための運動学習に関する脳内情報処理のメカニズムの解明に役立つと考えられる。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering
巻: 26 ページ: 1363-1370
10.1109/TNSRE.2018.2836341
Computational Intelligence and Neuroscience
巻: 2018 ページ: 1~8
10.1155/2018/2580165
Frontiers in Neuroscience
巻: 11 ページ: 1-12
10.3389/fnins.2017.00733