研究課題
本研究では、オレキシン神経の活動とストレス誘発自律神経応答の関係について、無麻酔無拘束マウスからの活動記録法を用いて解析した。遺伝学的にオレキシン神経特異的にGCaMP6を発現したマウスを作成し、自由行動下においてそのカルシウム応答を測定した。同時に自律応答の指標として心拍応答も測定した。急性ストレス負荷として、侵入者ストレス、嫌悪音ストレス、嫌悪臭いストレスの異なる感覚系により感知される3種類のストレス負荷を用いた。解析の結果、自由行動マウスのオレキシン神経は、急性ストレス負荷に対して即時的かつ一時的に活動することが明らかとなった。この一過性の活動はストレスの種類に寄らず同様であった。次に、このような反応はストレスの感覚的なものによるのか、ストレスに伴う嫌悪感に由来するのか区別するために、恐怖条件付けを応用した実験系を行った。これは、音のみでは恐怖によるすくみ行動が起こらないような中性的な音を条件刺激とし、電気ショックとの条件付けの有無で音に対する反応を比較するものである。この実験の結果、恐怖情動と条件付けされてない場合、音刺激に対してすくみ行動、心拍上昇、オレキシン神経活動いずれも特に変化しないのに対し、条件づけ後に音刺激を行う場合、すくみ行動、心拍上昇、オレキシン神経活動の上昇が観察された。本研究により、オレキシン神経はストレス誘発自律応答に関わっている可能性が示唆されたが、それは特にストレスによる嫌悪感に対して反応し自律応答を引き起こしている可能性が考えられた。オレキシンが嫌悪感に応答し自律神経応答を即時変化させているという事実は、オレキシンをターゲットとしたストレスケア戦略の構築に役立つ情報を提供できたのではないかと考える。生きていく上で避けることの難しいストレスに対して、オレキシン神経に着目しあらかじめマネジメントできれば、過剰な自律応答を防げるかもしれない。
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