我々がポリグルタミン凝集体タンパク質(PAIP)として同定してきたFUS/TLS、EWS、TAF15、ubiquilin2、matrin3はALS/FTLDの責任遺伝子がコードするタンパク質であることが次々と判明している。未発表PAIPのうちDDX17はDEAD box RNA helicaseファミリーの一つで、RNA代謝においてリボソーマルRNA生成、スプライシング、転写といった重要なポイントに関与するとされている。一方ALSはその病因として近年、RNA代謝異常が注目されてきている。そこで我々はDDX17が孤発性ALSの病態に関連しているのではないかと仮説をたて、研究を行った。病理学的にALSと診断された13例のALS剖検例と6例のコンントロール剖検例を用いて、脊髄前角細胞におけるDDX17の分布を確認するため免疫組織学的評価を行った。コントロール症例では、細胞質はびまん性に淡く染色され、核に染色性はみられなかった。一方孤発性ALS症例では核に染色性はみられないが、細胞質はコントロールより強くびまん性に染色され、かつ微細な顆粒状の蓄積が複数観察された。この所見は孤発性ALS13例全例に認められた。細胞質への微細顆粒状蓄積が形態的に小胞体の局在と類似していたため、小胞体マーカーであるGRP78、PDIとの免疫蛍光染色を行ったところ、いずれとも共局在を確認できた。また孤発性ALSの代表的病理所見であるTDP-43陽性細胞質内封入体との共局在は認めなかった。以上の結果より、DDX17が孤発性ALSの小胞体に蓄積することでALSの病態に関与している可能性を示す重要な証拠を得ることができたと考えられる。
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