研究実績の概要 |
脳アミロイド血管症は大部分のアルツハイマー病患者の剖検脳で認められる病態であるが, この脳アミロイド血管症は脳血管障害の原因となり, 認知機能障害を増悪させる. 更に脳アミロイド血管症は, tau蛋白のリン酸化を促進し, 神経細胞死の原因となる (投稿準備中). 脳アミロイド血管症はβ-amyloidとtauをつなぐ重要な因子の一つであり, 我々は脳アミロイド血管症の治療を目指してきた. 本研究の最大の成果は, taxifolinの脳アミロイド血管症に対する有効性を示した点である (ANC 2017, PNAS 2019). 我々は以前から, β-amyloidの脳外への排出促進に注力してきた. その一例がcilostazolの認知症への応用である. 既に我々は, 軽度認知障害患者にcilostazolを投与する医師主導治験 (COMCID治験) を開始している. しかしcilostazol単剤で認知症を完全に制圧できるとは考えにくい. 本研究では, cilostazolと併用する薬剤としてtaxifolinに注目し, モデルマウスにtaxifolinを投与した. その結果, taxifolinは, 脳内のβ-amyloid沈着量を減少させるのみならず, 脳血流障害や認知機能障害を著明に改善させた. また, taxifolinを投与したモデルマウスでは, β-amyloidオリゴマーの減少が見られ, 脳から血中へのβ-amyloid排出が亢進していた. また本研究では, cilostazolとtaxifolinの併用に, 顕著な相乗効果があることを見出し, 特許申請にまで至った (投稿準備中). 現在 cilostazol/taxifolin併用療法の特定臨床研究・医師主導治験の準備を行っている.
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