研究実績の概要 |
ミクログリアは、これまで脳内の免疫細胞として考えられてきたが、神経再生、シナプス新生ならびに神経ネットワークの切り替えなど、実に多彩で重要な脳機 能に深く関与していることが明らかになっている。また、動物モデルではミクログリアの機能異常がてんかんやうつ病といった難治性中枢性疾患の発症及び増悪 に大きく関わっていることも最近数多く報告されている。ミクログリアの研究は主にマウスミクログリアを中心に行われてきた。一方で、ヒトミクログリアの研 究も一部行われているが、これらは主にin vitro 実験系で展開されている。しかし、マウスミクログリアとヒトミクログリアはその分子発現及び機能に大きな 差があること、ミクログリアの性質はin vivo とin vitro で予想以上に乖離があること等が問題となっている。したがって、ミクログリアを標的とした治療戦 略の確立のためには、in vivo 実験系におけるヒトミクログリアの理解が急務である。 昨年度までは完全非侵襲的な、経鼻移植法経鼻移植法により ヒトミクログリアを移植する方法を確立した。種々の条件の最適化により移植後少なくとも二ヶ月間は安定的に海馬及び小脳に定着させる方法を確立し、移植後の各時点(7, 14, 28,60 日後)における脳を採取し、PFA 固定標本を作製し、ヒト細胞特異的な抗Stem121抗体を用いて免疫組織学的解析を行い、ヒトミクログリアの性質を形態学的に解析した。
|