研究実績の概要 |
長期記憶の形成には新規の遺伝子発現やタンパク質合成が必須であることが明らかになっているが,どのような分子により制御されているかについては未だに明らかではない.分泌型軸索ガイダンス分子セマフォリン3A(Sema3A)が記憶形成の分子基盤であるAMPA型受容体をシナプスへ移行し短期記憶の成立に必要であることを明らかにした.従って,Sema3Aの長期記憶の形成,AMPARsの新規合成を制御するかを検証する.Sema3Aが長期記憶形成に関与する場合,この機構の障害による精神疾患や記憶障害の病態解明や創薬のターゲットとなることが期待される. 本年度は,まず長期記憶形成時における分泌領域を特定する上で,Sema3Aが記憶形成時にどの領域より分泌されるかをSema3Aの分泌を可視化する事が可能な変異マウスを用い免疫組織化学染色法により検証した. 海馬学習依存的な受動的回避行動試験実施後,4%パラホルムアルデヒドにて灌流固定し,ビブラトームにて脳切片を作成し海馬領域にてプレシナプスマーカー,ポストシナプスマーカーと分泌Sema3Aを共染色した.その結果,分泌Sema3Aはプレシナプスマーカーと共局在している事が明らかになった.以前より,in vitroの系でSema3Aは有芯小胞に内包されている事が報告されている.この結果は,記憶が形成される際に有芯小胞を介してプレシナプスより分泌されることが示唆された.
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