研究課題
長期記憶の形成には新規の遺伝子発現やタンパク質合成が必須であることが明らかになっているが,どのような分子により制御されているかについては未だに明らかではない.分泌型軸索ガイダンス分子セマフォリン3A(Sema3A)が記憶形成の分子基盤であるAMPA型受容体をシナプスへ移行し短期記憶の成立に必要であることを明らかにした.従って,Sema3Aの長期記憶の形成,AMPARsの新規合成を制御するかを検証する.Sema3Aが長期記憶形成に関与する場合,この機構の障害による精神疾患や記憶障害の病態解明や創薬のターゲットとなることが期待される.本年度は,Sema3AがAMPARsの新規合成への関与を明らかにするため初代海馬分散培養細胞21日目にSema3Aを添加した24時間後にAMPARsの発現量をウエスタンブロッティング法により定量した。その結果、Sema3AによりAMPARsのサブユニットであるGluA1の発現量が他のGluA2/3/4 サブユニットと比較して増加することが明らかになった。この結果はSema3AがGluA1の新規合成に関与することが示唆された。また、長期記憶時に関与するシグナル経路を同サンプルにて解析を行い新たな知見を得ることができた。さらには実際にSema3AにてAMPARsが新規タンパク合成される動態をイメージングで解析するために新規合成タンパクをラベル化する技術を立ち上げつつある。
2: おおむね順調に進展している
in vitroでSema3AがAMPARsの新規合成に関与する知見が得られたため。今後は個体レベルでの解析を進めていく。
2019年度当初の計画通り進めていく予定である。個体レベルでの長期記憶形成時のSema3Aの動態解析ならびにSema3Aによるin vitroでのシナプスにおける局所的なAMPARs新規タンパク合成について新規合成タンパクを標識化する技術を用いイメージングや免疫化学染色にて明らかにしていく。
現在得られている予備的な結果より,当初の予想より解析対象が多くなる可能性が考えられた.動物の凍結胚からの個体の作成や抗体の作成、新規合成タンパクのラベル化技術の立ち上げるため,2018年度の未使用残額をこれらに充てるため繰越申請を行う.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Neurochemistry international
巻: 119 ページ: 207-217
10.1016/j.neuint.2018.04.009
Science
巻: 360(6384) ページ: 50-57
10.1126/science.aao2300