研究課題/領域番号 |
17K14968
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
早川 英介 沖縄科学技術大学院大学, 進化神経生物学ユニット, 研究員 (20739809)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経伝達物質 / イメージング / 神経化学 / 質量分析 / イオンモビリティ |
研究実績の概要 |
H29年度は主にイオンモビリティ―(IM)と質量分析(MS)のハイブリッド装置であるSynapt G2 (Waters)を用いた分析系の確立を行った。神経伝達物質の標準品群をIM-MS装置で測定し各物質固有のCollision Cross Section(CCS)と質量スペクトルを組織的に得た。 測定したIM-MSスペクトルデータを各物質の構造情報・代謝パスウェイなどの化学的データを統合したデータベースを設計・実装した。このデータベースを用いることでIM-MSイメージングデータから高い特異性で物質の定性をすることが可能になる。さらに、各物質の定量情報を代謝パスウェイデータをもとにリンクすることで、イメージングデータ上での代謝バランスの数値化が可能となった。次年度にはMSイメージング解析アルゴリズムMSIdVにこのデータベースを統合させることで代謝バランスのイメージングを行う予定である。 また、標準品が入手困難な物質に関しては実測のIM-MSスペクトルを得ることができないために、実測CCS情報を得るのが困難であった。そこで物質の二次元構造情報からCCS情報を予測するパイプライン開発を研究実施機関の質量分析ファシリティのスタッフと共に行った。これにより、広範囲の神経伝達物質代謝物および関連物質のIM-MS分析系での定性が可能になった。 以上のように、IM-MSによる神経伝達物質とその関連物質の高感度・高い特異性での物質定性と定量が可能を可能にする分析系を構築した。来年度は本分析系を用いてモデル動物のIM-MSイメージングとデータ解析の実施を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29年度は主に分析系の確立を行い、IMS-MSスペクトルライブラリの構築を予定通りに実施した。加えて、CCS予測パイプラインの開発やIM-MSスペクトルデータ処理の自動化パイプラインなどにより、分析およびデータ処理の迅速化につながった。 一方で、研究実施機関の装置の不具合とメンテナンスによりMALDIイオンソースがしばらくの間使用できなかった影響でイオン化剤の検討が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はH29年度で実施が遅れているイオン化剤の検討をまず行う。すでにMALDIソースが修理されたIMS-MS装置が稼働中であり、分析を開始することができる。 IM-MSイメージングデータの取得に関しては、動物の飼育環境はすでに準備済みであり、統合失調症モデルマウスを薬剤投与により作成し、脳切片に選択されたイオン化剤を塗布して分析を行う。 IM-MSイメージングデータ解析に関してはすでに論文を発表済みであるMSイメージング解析アルゴリズムMSIdVにIM軸を追加したバージョンの作成を行い、H29年度に構築したIM-MSスペクトルライブラリと連携することで、神経伝達物質の生合成・代謝バランスの解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度では学会発表に十分な結果が得られなかったため、学会への参加などの出張を控えた。次年度は初年度行かなかった分、当初の予定より積極的に学会に参加し成果発表を行う。 研究実施機関の分析装置の不調のためイオン化剤の検討など一部の予定していた分析をH29年度に十分に行うことができなかったため、その関連物品の購入を控えていた。次年度にそれら分析を行うために試薬やその他消耗品の購入などに充てる。
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