CRISPR/CasシステムやTALENなどのゲノム編集技術は、生物の遺伝子操作に画期的な変革をもたらした。特に、特定遺伝子の破壊や塩基置換などのゲノムDNAの改変は飛躍的に容易になっている。一方で、外来遺伝子を特定遺伝子座にノックインする効率はいまだに低い。外来遺伝子のノックインは、遺伝子発現を限られた細胞集団で操作したり、安定的な発現を実現したりするために欠くことのできない技術であり、より効率的なノックイン技術の開発が求められている。 本研究課題では、標的遺伝子へのノックインは確率的な現象であり、その効率は標的遺伝子座周辺に存在するドナー外来DNAの濃度に比例するという仮説のもと、由来の異なる2種のCas9タンパク質を組み合わせた「連結型Cas9」を用いることで、標的遺伝子座周辺のドナー外来DNAの濃度を高め、ノックイン効率の向上を試みる。 平成30年度は、平成29年度に作製した連結型Cas9タンパク質発現コンストラクトを用い、引き続きノックイン効率を培養細胞を用いて解析を行ったが、有意なノックイン効率の改善には至らなかった。また、連結型Cas9のmRNAを用いてマウス受精卵に対するノックイン操作を行ったが、従来のCas9コンストラクトに対して有意なノックイン効率の改善は見られなかった。Cas9を連結することにより巨大なタンパク質となり、発現量が低いという問題があったため、発現量の改善を試みたが、ノックイン効率を向上をもたらすには至らなかった。
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