研究課題/領域番号 |
17K14975
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮坂 勇輝 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (30778098)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マウス / ストレプトゾトシン / 遺伝学 / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
ストレプトゾトシン(STZ)は膵島を特異的に破壊するため、マウス・ラットの実験的糖尿病モデルの作製に汎用されている。マウス系統にはSTZ感受性に系統間差異が存在し、このSTZ感受性の原因遺伝子を同定することは、膵島脆弱性に起因する糖尿病発症機構の解明に繋がることが期待できる。本研究ではSTZ感受性の異なるA/JとSM/J系統間に見出したMpg遺伝子のミスセンス変異(p.132Ala>Ser)およびC3HとNSY系統間に見出したRad50遺伝子のミスセンス変異(p.200Gly>Val)のSTZ感受性効果を検証することを目的とし、本年度は以下の実験を実施した。 1. Mpg遺伝子のSTZ感受性効果の検証 Mpg遺伝子のミスセンス変異の効果を検証するため、STZ感受性系統であるA/J系統のMpg遺伝子変異(p.132Ser)を抵抗性系統であるSM/J系統型(p.132Ala)にノックイン(KI)置換したA/J-Mpg・KIマウスをゲノム編集により作製した。 2. Rad50遺伝子のSTZ 感受性効果の検証 Rad50遺伝子のミスセンス変異の効果を検証するため、STZ感受性系統であるNSY系統のRad50遺伝子変異(p.200Val)を抵抗性系統であるC3H系統型(p.200Gly)に置換したC3H.NSY-Chr11サブコンジェニック-Rad50・KIマウスを作製・系統化し、STZ多量単回投与後の血糖値を調査した。その結果、Rad50・KIマウスの血糖値の上昇パターンはC3H.NSY-Chr11サブコンジェニック系統と比較して有意に抑制されており、糖尿病発症率も低下していた。このことからRAD50のp.200Gly>Val変異がSTZ感受性効果を持つことが示唆されたが、その変異置換だけでC3H.NSY-Chr11サブコンジェニック系統の血糖値の上昇を完全に抑制することはできなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はゲノム編集技術を用いてMpgおよびRad50遺伝子の目的の変異を置換したKIマウスを作製することに成功した。C3H.NSY-Chr11サブコンジェニック-Rad50・KIマウスについては表現型解析に着手することができ、p.200Gly>Val変異のSTZ感受性効果を検証することができた。一方、A/J-Mpg・KIマウスについては、その作製条件を整えるのに時間を費やしたため、本年度予定していた表現型解析を実施するに至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
1. Mpg遺伝子のSTZ感受性効果の検証 A/J-Mpg・KIマウスの系統化を進め、STZ投与後の血糖値および血中インスリン値の測定および膵島の病理組織学的解析を実施する。また、A/J-Mpg・KIマウスから単離・培養した膵島細胞を用いてMpg遺伝子のp.132Ala>Ser変異の効果を検証する。 2. Rad50遺伝子のSTZ 感受性効果の検証 1.同様、C3H.NSY-Chr11サブコンジェニック-Rad50・KIマウスの詳細な膵島の表現型解析を実施する。また、Rad50・KIマウスから単離・培養した膵島細胞を用いてin vitro解析での変異の評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
・次年度使用額が生じた理由 本年度は予定通り両遺伝子のKIマウスを作製することができたが、A/J-Mpg・KIマウスの作製に時間を費やしたため、その表現型解析に着手できず次年度使用額が生じた。 ・次年度の使用計画 本年度着手できなかったA/J-Mpg・KIマウスの表現型解析の一部を本年度未使用額を用いて実施する。次年度請求した助成金はC3H.NSY-Chr11サブコンジェニック-Rad50・KIおよびA/J-Mpg・KIマウスの膵島の詳細な表現型解析および単離膵島を用いたin vitro解析に必要な試薬類・消耗品の購入とマウスの飼育費に充てる
|