研究課題/領域番号 |
17K14978
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
村山 正承 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (60737675)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / 軟骨細胞 / CTRP6 |
研究実績の概要 |
変形性関節症は関節軟骨の磨耗により生じた骨棘による痛みや骨組織の変性が特徴的な骨代謝疾患である。日常生活動作(Activities of Daily Living、ADL)や生活の質(Quality of Life、QOL)を低下させ、健康寿命を脅かす。その発症には遺伝的要因だけでなく加齢や肥満とも密接な関わりがあり、高齢化社会や生活習慣病が深刻な問題となっている問題では解決すべき課題の1つであるが、根本的な治療法は確立されていない。 CTRP6は関節リウマチモデルマウスにて発現が亢進していたタンパク質であり、補体制御因子として作用することで自己免疫疾患の発症を抑制する因子であることを明らかにしている。また、CTRP6欠損マウスが変形性関節症を自然発症することを見出しているが、その分子機序は明らかではない。 そこで本研究では、変形性関節症におけるCTRP6の分子機序の解明および治療薬の開発を目的として、CTRP6の生理機能の解明を行った。変形性関節症には細胞外マトリックス分子であるfibromodulinによる補体経路の過剰な活性化が関与することが報告されている。そこで、CTRP6遺伝子改変マウスを用いて、fibromodulin誘導補体活性化におけるCTRP6の影響を検討した結果、CTRP6はfibromodulinによる過剰な補体活性化を抑制することを明らかにした。 また、CTRP6は軟骨細胞増殖を制御することを見出しているが、そのシグナル経路などは明らかではない。そこで、受容体候補であるPAQRファミリーについて検討を行った。その結果、PAQRファミリーのクラスⅠに属するPAQR1-PAQR4の4つの受容体が軟骨細胞で発現が高いことがわかった。現在はRNA干渉を用いて、CTRP6による軟骨細胞増殖におけるPAQRファミリーの役割について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞外マトリックス分子であるfibromodulinは変形性関節症患者の血中に多く存在し、補体経路を活性化させることで変形性関節症を増悪化させることが知られている。そこで、補体第二経路特異的な制御因子であるCTRP6の影響を検討した結果、CTRP6はfibromodulin誘導補体活性化を抑制した。このことから、CTRP6は変形性関節症において損傷した関節軟骨から遊離したfibromodulinによる過剰な補体活性化を抑制することがわかった。また、CTRP6が軟骨細胞の増殖を制御することを見出しているが、そのシグナル経路などは明らかではない。CTRP6の受容体候補であるPAQRファミリーのうちクラスⅠに属するPAQR1-PAQR4が軟骨細胞で発現していることを見出した。現在はこれらの受容体とCTRP6の関連について検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度より東京理科大学生命医科学研究所から聖マリアンナ医科大学へと異動をした。そのため、CTRP6遺伝子改変マウスをはじめとする実験動物を用いた解析が困難となった。そこで、今後の研究の推進方策は前年度までに軟骨細胞で発現が高いことを見出したPAQRファミリーのクラスⅠを中心に詳細な解析を実施する。CTRP6はPAQR1を受容体として機能する報告があるが、軟骨細胞増殖における役割は不明である。そこで、本研究ではRNA干渉や阻害剤を用いて、CTRP6による軟骨細胞増殖におけるPAQRファミリークラスⅠの役割を明らかにすると共に下流のシグナル経路についての探索も行い、変形性関節症に対するCTRP6の治療薬開発に向けた基礎研究を実施する。
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