研究課題
変形性関節症は関節軟骨に生じた骨棘などの骨組織の変性が特徴的な骨代謝疾患である。その発症には遺伝的要因だけでなく、加齢や肥満とも密接な関わりがある。そのため、高齢化社会や生活習慣病が深刻な問題となっている日本では解決すべき課題の1つである。補体制御因子であるCTRP6を欠損したマウスは加齢と共に変形性関節症を自然発症する。しかし、その発症機序は明らかではなかった。本研究では、変形性関節症におけるCTRP6の分子機序の解明および医療薬の開発を目的として、CTRP6の生理機能の解明を試みた。関節軟骨の摩耗により遊離する細胞外マトリックス分子fibromodulinは補体経路を過剰に活性化させ変形性関節症を悪化させることが知られている。そこで、補体第二経路の制御因子であるCTRP6の影響を検討した結果、過剰な補体活性化を制御した。このことから、CTRP6はfibromodulinによる補体第二経路の活性化を制御することで、軟骨破壊を抑制していることが明らかとなった。損傷した軟骨の再生には軟骨細胞の分化・増殖が重要である。CTRP6欠損マウス由来軟骨細胞は野生型マウス由来軟骨細胞に比べ、軟骨細胞の分化・増殖が抑制されるが、CTRP6の添加により改善されることを見出した。このとき、CTRP6はPAQR受容体-MAPK経路を介して細胞増殖を制御していることを明らかにした。これらの研究成果から、CTRP6は補体制御因子として軟骨細胞の破壊を阻害すると共に、軟骨細胞増殖因子として軟骨細胞の再生を促進することで変形性関節症の発症を抑制していることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
変形性関節症は日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を低下させ、健康寿命を脅かす骨代謝疾患であり、根本的な治療法は確立されていない。本研究課題の成果によりCTRP6が関節軟骨の破壊を抑制すると共に、関節軟骨の再生を促進するという2つの作用を持つことを明らかにした。そのため、CTRP6は変形性関節症に対する治療標的として有用であることが期待される。
現在論文投稿準備中である。今後は軟骨細胞増殖因子としてのCTRP6について詳細な作用機序の解明を試みる。
論文投稿準備中であり、追加実験を行う必要が生じたため。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (2件) 産業財産権 (1件)
Journal of Clinical Investigation
巻: 128 ページ: 5399~5412
10.1172/JCI121901
PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0203657
10.1371/journal.pone.0203657
The Journal of Immunology
巻: 201 ページ: 167~182
10.4049/jimmunol.1701157