研究課題/領域番号 |
17K14979
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
高橋 司 公益財団法人実験動物中央研究所, マーモセット医学生物学研究部 応用発生学研究室, 研究員 (90571175)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マーモセット / 遺伝子改変動物 / piggyBac / 発光レポーター |
研究実績の概要 |
平成30年度は平成29年度に作製した蛍光・発光選抜piggyBacベクターCMV-hKO-PB-CAG-cp156Venus-Luciferasse2とパーキンソン病の原因遺伝子であるLRRK2(G2019S)を導入したCMV-hKO-PB-CAG-LRRK2(G2019S)-2A-cp156Venus-Luciferasse2の発現を細胞とマウス胚を用いて評価した。まずコントロールとして作製したレポーター遺伝子のみのCMV-hKO-PB-CAG-cp156Venus-Luciferasse2については、293T細胞において蛍光と発光の発現の切り替わりにより遺伝子導入の有無の選定が可能であることを示した。また、マウス胚にマイクロインジェクションを行い、発光検出機であるIVISを用いて胚一個から発光レポーターを検出する条件を設定した。発光は蛍光で問題となる自家蛍光がほとんどないため、発現評価の正確性が高かった。しかしながら、インサート配列がより長い(13kbp)パーキンソン病の原因遺伝子であるLRRK2(G2019S)を導入したCMV-hKO-PB-CAG-LRRK2(G2019S)-2A-cp156Venus-Luciferasse2については、293T細胞において蛍光と発光の発現量が顕著に低下した。マウス胚においては核酸注入濃度を上昇させてマイクロインジェクションすることでレポーター遺伝子の発現が検出できたが、胚毒性のため胚発生率が半減してしまった。卵子の希少なマーモセットに本技術を応用するためには導入効率の向上とより検出感度の高いレポーターが必要と考えられ、現在cp156Venus-Luciferasse2よりも配列が短く検出感度が数十倍高い発光遺伝子NanoLucを用いた検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は構築したベクターにおいて蛍光と発光の発現の切り替わりにより遺伝子導入が判別できることや、発光検出機のIVISを用いて胚一個から発光の発現を評価できることを示した。しかしながら、大きな遺伝子であるパーキンソン病のLRRK2 (G2019S)を搭載したベクター(インサート配列部分13kbp)については細胞とマウス胚どちらにおいてもレポーター遺伝子の発現と遺伝子導入効率が低下し、計画していたTgマウス作製検討に至らなかった。卵子の希少なマーモセットでTg個体作製を目的とした場合、現在の効率では個体作出が困難と考えられ、コンストラクション改良のため計画がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在cp156Venus-Luciferasse2よりも短い配列で、検出感度が数十倍高いNanoLucを用いた導入効率の改善と選抜精度の向上を試みている。NanoLucを搭載したレンチウイルスベクターではすでに、8細胞期のマーモセット胚より数秒で発光を検出できることや、遺伝子導入胚の選抜指標として正確性が高いことを明らかとしている。また、これまで発光検出機はIVISを用いてきたが、最近1細胞レベルで発光の局在を検出できる発光倒立顕微鏡が導入され、より詳細な評価が可能となった。今後はNanoLucを搭載したpiggyBacベクターの発現を評価し、マーモセットでの移植実験に移行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高価な発光基質が節約できたことや、マウス飼育のケージ等の備品を貸与していただけた他、マウス凍結受精卵については以前作成していた余剰卵を使用したため次年度使用額が生じた。
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