組織が損傷を受けた際に起こる止血反応によって形成される血餅には、血小板と多くの赤血球がトラップされる。哺乳類以外の生物では、血小板の役割を果たす栓球と赤血球が有核であることから、無核である哺乳類とは異なる生理反応を示す可能性が考えられる。組織損傷時に創傷箇所に形成される血餅において、どのような変化が起こっているかについて解析を進めた結果、血餅中の血球細胞が、継時的に遺伝子発現を変化させていることが明らかになった。このような遺伝子発現変化がどの血球細胞で起こっているのか、血液凝固反応がそれぞれの細胞にどのような変化をもたらすのかについては、引き続き詳細な解析が必要である。両生類の血球細胞に関しては、まだ情報が十分とは言えず、細胞の種類によってはマーカー遺伝子すらよくわかっていない。現在、一部の血球細胞種に関して、マーカー候補遺伝子の解析を進めている。血球細胞表面の糖鎖構造は、血球を区別する重要な要素となることから、各血球細胞の表面糖鎖構造を特異的に認識して結合するレクチンの選定を進めた。蛍光色素標識したレクチンによる染色性の差異によって血球細胞を分類することを目指している。各血球細胞に対して異なる結合性を示すレクチンを見出しており、この結合特異性が両生類生物種間を超えて保存されるのかどうか、無尾両生類・有尾両生類それぞれのモデル生物を用いて検証するとともに、これらの結果をもとに、生物種に応じた各血球細胞の選別技術・標識技術の最適化を進めたい。
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