研究課題/領域番号 |
17K14981
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
沖田 結花里 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30743710)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | GPNMB / EMT / がん幹細胞 / 幹細胞マーカー / 環状ペプチド |
研究実績の概要 |
がんの根治を妨げる原因として、腫瘍中に低い割合で存在するがん幹細胞の存在が挙げられる。がん幹細胞は自己複製可能で治療抵抗性があり、循環血液中もしくはニッチ領域においても休止状態で存在することが可能であるため、治療後の再発や転移の原因になると考えられている。申請者はI型膜タンパク質Glycoprotein nmb(GPNMB)が、上皮間葉転換(EMT)の誘導および乳がんの腫瘍形成に関与することを明らかにした。EMTは幹細胞性獲得への寄与が報告されており、GPNMBが幹細胞性獲得に関係しているのかについて検討することとした。GPNMBと幹細胞との関連が明らかになれば、GPNMBを標的とした治療が、がん幹細胞を標的としたがん根治を可能にする治療法に発展する可能性を示している。本研究課題は、がん幹細胞におけるGPNMBの役割を明らかにし、新規がん治療薬および診断薬の開発に取り組むものである。 平成29年度中に、GPNMBの発現が高い細胞を蛍光活性セルソーティング(FACS)によって分取する方法を確立し、幹細胞マーカー、増殖マーカーの発現を調べた。GPNMBhigh細胞群ではGPNMBlow細胞群に比べ、幹細胞マーカーの発現が有意に高く、増殖マーカーの発現が有意に低いことが明らかになった。GPNMBは休眠期にあるがん幹細胞で特異な発現パターンを示すことが分かった。またGPNMBhigh細胞群は高い造腫瘍性が認められた。GPNMBのドメイン解析も進めており、腫瘍形成や幹細胞性維持に重要と思われる領域に対する抗体および特殊環状ペプチドのスクリーニングを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画1. がん幹細胞の単離法の確立およびがん幹細胞におけるGPNMBの発現と局在については、乳がん細胞を3次元Sphere培養することにより、2次元単層培養に比べて、幹細胞マーカーの発現が高い細胞幹細胞様細胞を濃縮することができた。また3次元Sphere培養では、GPNMBのmRNAおよびタンパク質の発現が高く、細胞表面により多く局在することが明らかになった。 研究計画2. がん幹細胞性獲得または維持におけるGPNMBの機能解析については、腫瘍形成に重要と思われるドメインを複数同定しているが、それらのうちいくつかが、幹細胞性獲得にも寄与しているという結果を得ることができた。その領域に対する抗体や特殊環状ペプチドのスクリーニングを進めている。 研究計画3. GPNMBを標的とした特殊環状ペプチドの医療応用については、in vitroでの検証実験は進んでいるが、ex vivo、in vivoでの検証実験を始める必要があり、そのための準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画1、2. GPNMBが幹細胞性の獲得または維持に関与しているという結果を得ることができたので、今後はさらにどのように寄与しているのかについて分子レベルでの詳細な解析を続ける。 研究計画3. GPNMBの特異的に結合する環状ペプチドを利用し、腫瘍抑制および転移抑制効果について個体レベルで検討する。また抗体作製も継続して行う。
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