研究課題/領域番号 |
17K14983
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
眞野 恭伸 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (80577362)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞老化 / 癌 |
研究実績の概要 |
正常細胞における早期細胞老化機構の破綻は様々な癌に深く関与し、その破綻によって誘導される癌化の分子機構の解明は、我が国における重要な研究課題となっている。 本研究では、早期細胞老化機構における新規重要因子であるJAG1遺伝子に着目し解析を行うことで、複雑に制御される癌化メカニズムの解明を目的としている。H29年度は、研究計画に基づき、(1)ゲノムワイドな統合的解析による早期細胞老化のJAG1-Notchシグナル癌抑制機構の解明、(2)新規重要因子JAG1のドメイン解析及び早期細胞老化に重要な下流標的因子の解明について解析を行った。 (1)では、まず癌遺伝子Ras/Rafを活性化させ早期細胞老化を誘導した際の遺伝発現変化、並びにヒストン修飾変化を網羅的に解析した。その結果、細胞老化誘導時にH3K27acの獲得を伴うJAG1の発現上昇を認め、JAG1-Notchシグナルの下流であるp21、p15にも同様の変化が確認された。またJAG1 KD下でRas/Rafを活性化すると細胞老化を回避し、SA-β-gal活性も有意に低下、老化時に見られたH3K27acの獲得を伴うp21、p15の発現上昇も起きていなかった。次にJAG1をWI-38で強制発現させた結果、Ras/Rafの活性化をせずにJAG1の単独発現で細胞老化を誘導できることが明らかとなった。さらにRNA-Seq解析から、JAG1を強制発現した老化細胞でp21、p15の上昇が認められた。 (2)では、JAG1のDeletion Constructによる各ドメインの強制発現を行い、細胞増殖能を検証した結果、JAG1の細胞外ドメインに増殖抑制機能があることを見出した。また各ドメインの強制発現のRNA-Seq解析の結果、p21、p15の発現上昇が増殖抑制機能に重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H29年度に予定していた研究計画は、全て滞りなく進行した。JAG1 のKDと強制発現の解析から、JAG1を介してp21とp15の発現が上昇することが早期細胞老化において重要であることが明らかになった。 また既にH30年度に計画していた共培養の実験についても解析を進めている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きH30年度の研究計画通りに、 (3)臨床標本データにおける新規重要因子JAG1の破綻による発癌分子機構の解明 (4) Notchシグナル活性化・非活性化細胞の共培養による早期細胞老化伝達メカニズムの解明 に関して解析を実施していく。(3)に関しては、The Cancer Genome Atlas(TCGA)のデータと当研究室で保持している臨床検体を利用する予定である。また(4)に関しては、研究計画に追加して共培養実験下でのタイムラプス解析を行う予定である。
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