研究課題/領域番号 |
17K14984
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊地 逸平 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (80772376)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / クロストーク |
研究実績の概要 |
申請者らは最近、細胞の核内に局在するタンパク質「parafibromin」 がWntシグナル・Hedgehogシグナル・Notchシグナルの3つの発がん関連シグナル経路の遺伝子発現応答を統合的に制御する「転写足場タンパク質」として機能することを見出した。さらに、この機能はparafibrominの「チロシン脱リン酸化状態」依存的に制御されることを明らかにした。しかし、parafibrominのチロシンリン酸化ー脱リン酸化により制御される遺伝子発現制御の全容については、これまで明らかにされていない。そこで本研究では、parafibrominのリン酸化制御の役割を網羅的に解析・解明することを目指した。 平成29年度には、parafibrominならびにそのリン酸化制御が細胞機能に及ぼす影響を検討した。HEK293細胞および初代培養マウス胎児線維芽細胞(MEF細胞)に野生型parafibrominならびにチロシンリン酸化抵抗性parafibromin変異体を発現させた実験を行ったところ、興味深いことに、parafibrominのチロシン脱リン酸化状態に依存して細胞の増殖・生存が著しく抑制されることを明らかにした。さらに、parafibrominは、チロシンリン酸化および脱リン酸化状態にそれぞれ依存して、がん抑制性のシグナル伝達経路として注目される「Hippo経路」の転写制御因子YAPならびにTAZと複合体を形成して標的遺伝子を転写活性化させることを明らかにした (Tang et al., 研究発表雑誌論文1件目)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では本年度中に次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析(RNA-seq解析)を行う予定だったが、その前段階として行った細胞機能解析の結果が予期せず興味深いものであったため、本年度には細胞機能の解析を詳細に行った。その結果、細胞の増殖・生存にparafibrominのリン酸化状態が深く関与することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の今後の推進方策として、parafibrominのリン酸化制御が制御される上流のメカニズムを明らかにする。加えて、各種の遺伝子改変マウスを用いて個体レベルの現象におけるparafibrominチロシンリン酸化の意義の解明を試みる。また、上記実験の結果に応じてparafibrominによる遺伝子発現制御の網羅的解析(RNA-seq等)の実施も検討する。
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