研究課題/領域番号 |
17K14985
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金田 祥平 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (10542467)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん細胞 / がん細胞凝集体 / マイクロ・ナノシステム / 区画化培養 |
研究実績の概要 |
申請者は,薄膜に設けた貫通穴にがん細胞の凝集体であるスフェロイドを嵌め込むことで,薄膜で規定されたスフェロイドの一部分(メンブレンより下部)のみに薬剤を作用させる,スフェロイドの区画化培養系を開発している.本年度は,0.4 μmの細孔を持つ市販のカルチャーインサートのPET製の多孔膜にレーザー加工により直径約260 μmの貫通穴を製作し,膜にパリレンをコートすることで細孔を塞いだ培養系を製作した.続いて,肝がん細胞(HepG2細胞)のスフェロイドと低酸素活性化プロドラッグであるチラパザミンを用いて,上記培養系にてスフェロイドの一部(膜の下部)のみがチラパザミンにより処理されているかを調べた.コントロールとして,チパラザミンなしの系を用意し,スフェロイドの共焦点顕微鏡画像と凍結切片を用いて膜上下のスフェロイド寸法を比較したところ,膜より下部のみにチラパザミンによる増殖抑制がみられ,製作した培養系の有用性・信頼性が確認できた.また,ある一定のチラパザミン濃度以上では,細胞死によりスフェロイドが貫通穴から外れ,上記の区画化培養が破綻することも確認した. また,細胞凝集体の一部に望みの液性因子を作用させる本研究のコア技術を,多能性幹細胞のES/iPS細胞の凝集体である胚様体の一部へ分化誘導因子を作用させることにも応用し,胚様体の望みの部分を分化させることにも成功した(S. Kaneda et al., Biomicrofluidics 2017).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の区画化培養系で,本年度予定していた,膜上下で異なる酸素濃度,異なる栄養状態を実現することに対し見通しを得ているため,また,抗がん剤作用部であるスフェロイド下部と非作用部であるスフェロイド上部をピペッティングにより分断,個別回収が可能であることを確かめられていることより,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
スフェロイドの薬剤非作用部(膜上の部分)を低栄養・低酸素状態とし,膜下に部分に抗がん剤を作用させることで,より生体内の固形がんが持つ微小環境に近いin vitroモデルとしたい.また,栄養飢餓耐性因子に対する抗体と,低酸素誘導性因子に対する抗体とスフェロイド内部を観察するための細胞透明化試薬を組み合わせることで,望みの低栄養・低酸素状態を実現できているかを検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
学術論文のオープンアクセス化にかかる費用を約24万円と見積もり,平成29年度の研究成果をまとめた学術論文を雑誌に投稿したが年度内の受理に至らず,次年度使用額が生じた.この次年度使用額については,修正した学術論文が受理されるに至った際のオープンアクセス化にかかる費用として執行する予定である.
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