本研究は多くの癌で恒常的に更新しているWntシグナルに注目し、b-カテニンの標的lncRNAである12Rの機能解析を行い、癌発生および細胞増殖メカニズムへの関与を明らかにすることである。 12Rの機能を同定するために発現の有無によるH3K27Ac修飾の低下領域のモチーフ解析を行い、低下領域にはb-カテニンとベータ-ヘリックス・ループ・ヘリックス(bHLH)転写因子ファミリーの結合配列が有意に濃縮されることが明らかになった。実験に用いた細胞で発現が高いbHLH転写因子のChIP-seq解析を行うと、H3K27Acの低下領域とbHLH転写因子の結合が一致した。bHLHはヘテロダイマーを形成するが、今回同定したbHLH転写因子も使用細胞で複合体を形成していることがIPIBにより確認された。bHLH転写因子の一つはb-cateninの標的分子であり幹細胞の制御に重要であると報告されおり、12Rの発現低下に伴いbHLH転写因子の発現も低下していた。このことは12Rの抑制で異種移植による腫瘍形成能を低下させたこと、また12Rが完全にノックアウトされたクローンを得ることができなかったと関連すると考えられる。 12RはbHLH転写因子と直接結合することがRNA免疫沈降 (RIP)-PCRにより確認されたが、b-カテニンとの直接の結合は認められなかった。 まとめると、Wnt シグナルが亢進する一部の癌で発現するlncRNA12RはbHLH転写因子群と相互作用しb-カテニンの近傍に結合し、H3K27Acの修飾を亢進し標的遺伝子の発現を活性化させる。その結果、Wntシグナルの一部の発現制御を担い癌化に寄与していると推測される。
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