現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度には、まずMTA締結の元、米国Broad Instituteより、iPS細胞誘導性線維芽細胞株hiF-T細胞(Cacchiarelli et al., 2015, Cell)を分与いただいた。本細胞株は、Doxycyclineを添加すると、山中4因子(OCT4, SOX2, KLF4, MYC)を強制発現することが可能であり、それにより高効率に線維芽細胞をiPS細胞へとリプログラミングすることが可能である。実際、申請者ら研究室でもそれが再現された。また、本細胞株はテロメラーゼ(hTERT)を過剰発現することにより不死化されており、理論上無限の増殖能を持つとされている。本研究計画では、こうしたhiF-T細胞の利点を活かし、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子組み替え技術により、HIFの欠損をタモキシフェン依存的に導入することのできる新規の線維芽細胞株を樹立する予定であった。しかしながら、実際にそうした遺伝子改変を試みると、hiF-T細胞は低密度での培養条件では急速に細胞老化を起こして増殖能力を失ってしまい、安定的な遺伝子改変株をクローニングすることが不可能であった。低密度状態を回避するためにフィーダー細胞の存在下でのクローニングや、Doxycyclineを加えリプログラミング因子を発現させた状態でのクローニングなど様々なアプローチを検討したが、いずれも不首尾であった。
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今後の研究の推進方策 |
hiF-T細胞はヒト初代線維芽細胞にDoxycycline誘導性の山中因子発現カセットを安定的に導入したのちリプログラミングし、一次iPS細胞を作製した上で、それを再度線維芽細胞へと分化させることで樹立された(Cacchiarelli et al., 2015, Cell)。今後、我々の手で、同じ手法を用いて一次iPS細胞を作製し、それにHIFの欠損などの遺伝子改変を加える予定である。iPS細胞などの多能性幹細胞についてはCRISPR/Cas9を用いた遺伝子改変やクローニングが多数報告されており、上記の問題を解決できると考えられる。その後、線維芽細胞株を樹立し、当初予定していたスクリーニングを行なっていく予定である。
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