九州大学消化器・総合外科にて手術を行った肺腺癌417例について、PD-L1とEZH2の発現をIHCにて解析した。PD-L1については抗PD-L1抗体 (クローンSP142、ラビットモノクローナル)を用いた。染色条件は1:100の希釈濃度であり、陽性基準として腫瘍細胞、および腫瘍浸潤免疫細胞が染色されるもの、そして全体の5%以上が染色されるものを陽性と定義した。また、EZH2については抗EZH2抗体 (クローン6A10、マウスモノクローナル)を用いた。染色条件は1:100の希釈濃度であり、陽性基準としてAllred scoreを用い、0-2を陰性3-8を陽性とした。PD-L1とEZH2の発現は21%、および51%に認められ、さらにPD-L1とEZH2の発現は有意に相関することを示された (P<0.001)。PD-L1とEZH2の肺癌における相関関係は、免疫療法とEZH2阻害が相乗効果をもたらす可能性を示唆する結果である。しかし、細胞株を用いた実験では、7種類の肺癌細胞株を用いた検討で、EZH2の過剰発現、およびノックダウンを行ったが、EZH2発現変化によるPD-L1発現変化は見られなかった。この理由としてEZH2によるノンヒストンタンパクとしてのPD-L1のメチル化の可能性が考えられる。すなわち、ノンヒストンタンパクとしてのPD-L1メチル化によって、(1) 他の修飾への影響、(2) タンパク同士の結合への影響、(3) タンパクの安定性への影響、(4) タンパクの局在変化、および(5) 転写因子のプロモーター領域への結合変化が生じる。EZH2については、これまでにSTAT3などのノンヒストンタンパクをメチル化することが知られており、EZH2によるPD-L1のメチル化の可能性も考えられるため、今後の検討課題である。
|