研究課題/領域番号 |
17K14997
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
市川 壮彦 金沢医科大学, 医学部, 助教 (10462201)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん浸潤 / MDCK / 回転運動 / 定量化 |
研究実績の概要 |
がんは悪性化すると浸潤および転移をするが、生体内ではその過程を直接観察することが難しく、そのメカニズムや制御している因子については未だに明らかではない。近年、生体内の構造に類似した器官(類器官)を試験管内で作製する手法が開発され、より生体に近い環境でがん細胞の動態を観察することが可能になった。我々はMDCK細胞が3次元培養中で形成する類器官(シスト)をがん浸潤モデルとして用い、シストの回転運動に寄与する因子を明らかにすることによってがん浸潤因子候補を提供することを目標としている。 薬剤によるシスト回転運動を定量化するためのスクリーニングシステムの構築を行った。ヒストンH1に赤色蛍光蛋白質を融合させ核を標識し、炭酸ガス供給下で共焦点顕微鏡を用いて三次元タイムラプス観察を行った。得られたデータからImaris、ImageJ等を用いて1細胞レベルで半自動三次元トラッキングをするプロトコルを確立した。さらに、シストの回転運動には全ての細胞が同じ方向へ回転するコヒーレント運動と各細胞の位置が入れ替わりながら運動するランダム運動があり、後者とがんの悪性度との関連性が指摘されていることから、外積値を指標として用いることで回転運動のコヒーレント性を定量化する手法を考案した。これらの方法を用いてがん細胞において高頻度で見られるK-Ras活性型変異体(K-RasG12V)を発現するMDCKシストの回転運動を定量化した結果、通常のMDCK細胞と比べK-RasG12Vを発現するMDCKシストでは速度・外積値共に有意な上昇が観察された。現在、この方法を用いてシスト内の細胞動態を変化させる薬剤のスクリーニングを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MDCKシスト回転運動を3次元で定量化する系の構築についてはほぼ完了した。さらに回転様式を判別する方法の開発も行った。構築した系を用いた薬剤のスクリーニングを実施する段階に入っており、当初の研究の目的についてはおおむね順調に達成できているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は系の構築に注力し、それについてはほぼ目標を達成することができた。今後は各種阻害剤や変異体を用いて回転運動に対する影響を定量化することにより回転運動を制御している因子を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた、解析用PCが既存のもので代用可能であることが分かったため。
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