研究課題
本研究では、癌関連線維芽細胞 (CAF) 由来エクソソームが、癌のワールブルグ効果の維持に必須なグルコースの供給源となっていることを分子生物学的に証明することを目的とする。本研究から得られる成果は、癌のワールブルグ効果のメカニズムを本質的に解明するとともに、新しい機序の癌分子標的治療薬の開発に繋がる可能性があり、極めて意義が大きい。本研究は2年度内に「CAF由来エクソソームに含まれる大量のグリコーゲンが近接癌細胞の嫌気的解糖に利用され、生存に必須であることの分子生物学的検証」を実施する計画である。しかし、平成29年度5月より、申請者の出産に係る産前産後休暇ならびに育児休業のため研究を中断している。研究中断前までに、当初の29年度の計画のうち、腎癌切除組織を用いたCAF培養系の確立までを完了した。癌組織中の線維芽細胞 (CAF) は組織片培養法により単離した。組織片培養法は、線維芽細胞の高い遊走能に基づき既に確立された手法であり、具体的には腎癌手術検体組織を滅菌カバーガラスで固定して培養ディッシュ上で培養し、癌組織内から遊走してくる線維芽細胞を培養ディッシュ上で増殖させる。本法により、遊走能を持たない他の細胞の混入が抑えらえれ、CAFを選択的に培養することができる。単離した線維芽細胞についてCAFマーカーとして知られるα-SMAならびにVimentin染色を行いCAFとしての活性を確認するとともに、CAFの培養上清中からエクソソームを回収し定量するところまでを完了している。引き続き、30年度-31年度の2年間において、当初の研究目的を達成していく。
2: おおむね順調に進展している
申請者の出産のため研究を中断しているが、研究中断前までの進捗は順調である。引き続き30年度-31年度の2年間において、当初の研究計画を十分に達成することができると考えている。
当初29年度に計画した、①CAF由来エクソソーム精製法の確立、②CAF由来エクソソームの取り込みと、レシピエント癌細胞の生理応答について解析する。経過は概ね順調であり、当初の計画に従い研究を推進する。
申請者の出産に係り、研究を中断したため。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Neoplasia.
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