研究課題/領域番号 |
17K15000
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
小野寺 威文 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 博士研究員 (20733166)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵がん / 栄養飢餓 / がん代謝 / ペントースリン酸回路 |
研究実績の概要 |
腫瘍内部は、がん細胞の活発な増殖活動および脆弱な腫瘍血管形成により低酸素・低栄養環境にある。腫瘍内部のがん細胞はそのような環境に適応して生存するために様々な適応反応を示すことが知られており、この適応反応の一つが代謝改変(代謝リプログラミング)である。これまでに我々は、がんの代謝リプログラミングは創薬のターゲットとなり得ると考え、新規標的分子の探索を進めてきた。本研究では栄養飢餓(グルコースおよびアミノ酸欠乏)環境下においてペントースリン酸経路に関わるトランスケトラーゼ関連遺伝子に着目し、栄養飢餓環境におけるがん特異的代謝リプログラミング機構の解明を目的として研究を行なった。本年度は、トランスケトラーゼ遺伝子の機能解析のために、トランスケトラーゼ関連遺伝子安定発現細胞株、ゲノム編集(CRISPR/Cas9)またはsiRNAによるトランスケトラーゼ関連遺伝子ノックアウト/ノックダウン細胞株の作製と、作製した細胞株の栄養飢餓環境に対する適応性について解析を行った。トランスケトラーゼ関連遺伝子安定発現細胞株は、親株に比べて栄養飢餓環境における生存率が上昇した。一方で、siRNAによるトランスケトラーゼ関連遺伝子ノックダウン細胞株は栄養飢餓環境において生存率が低下することを明らかにした。これら結果より、トランスケトラーゼ関連遺伝子は栄養飢餓環境においてがん細胞の生存に重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスケトラーゼ関連遺伝子安定発現細胞株およびノックダウン細胞株を作製し、栄養飢餓環境におけるトランスケトラーゼ関連遺伝子の機能解析を行うことができた。さらには、次年度以降の研究計画であるトランスケトラーゼ関連遺伝子と腫瘍増殖との関連について、動物実験による造腫瘍試験およびトランスケトラーゼ関連遺伝子産物の生化学的な機能解析の準備も進んでいる。必要な材料が揃ってきたところで、今後の解析が期待される。膵がん細胞を用いたゲノム編集(CRISPR/Cas9)によるトランスケトラーゼ関連遺伝子ノックアウト細胞株の作製に関して、片アレルに変異を導入できたが両アレルが破壊されたノックアウト細胞株については、現在作製中である。このようにH29年度の研究計画どおりに進んでおり本研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、トランスケトラーゼはペントースリン酸経路に関わる酵素なので、トランスケトラーゼ関連遺伝子産物の発現量とペントースリン酸経路の関係を明らかにする。さらには、栄養飢餓環境におけるトランスケトラーゼ関連遺伝子の役割について詳細を明らかにする。そのために、作製した細胞株を用いた栄養環境および栄養飢餓環境においてペントースリン酸経路を含む中心代謝に関わる代謝産物の違い(メタボローム解析)について調べる。さらに、トランスケトラーゼ関連遺伝子産物を精製し、トランスケトラーゼ活性の有無等について生化学的解析を進める予定である。また、トランスケトラーゼ関連遺伝子と造腫瘍性に関して動物実験も準備が整い次第開始する予定である。トランスケトラーゼ関連遺伝子の分子機能や生理機能を細胞レベルおよび個体レベルで解析し、がん特異的代謝リプログラミングにおけるトランスケトラーゼ関連遺伝子の機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
この残額は次年度の物品費として使用する予定である。
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