研究実績の概要 |
トリプルネガティブ乳癌症例の術前化学療法開始前のレパトア解析では計544,208のリードが得られ、そのうち81.6%にあたる443,858リードが解析の対象となった。解析対象のうち73.9%にあたる327,807リードが機能性のものと判断され、固有のリードは全体の3.9%にあたる12,754リードであった。多様性の解析は4項目で施行したShannon-Weaver index H, Inv.Simpson’s index 1/λ, Pielou’s evenness, DE50)。Shannon-Weaver index Hでは7.360であり、健常人のそれ(8.929)と比較し低い結果であった。Inv.Simpson’s index 1/λは995、Pielou’s evennessは0.779、DE50は0.029といずれも健常人と比較し低値であった。 HER2陽性乳癌3例における機能的なリード数はTCRαでは113,000-297,000、TCRβでは120,000-195,000で、固有のリード数はTCRαでは全体の3.5-5.8%、TCRβでは全体の5.0-6.4%であった。V-J-CDR3の組み合わせで1%以上の頻度があった特異的なクローンを見ていくと、TCRα,βいずれにおいても3例に共通したものは認められなかった。また、使用頻度がトップ5のクローンをみても3例に共通したものは認められなかった。4つの多様性指数では、3例とも健常人の多様性指数を大きく下回る結果であった。化学療法前後の比較では、トップ5のクローンが各症例でそれぞれ、2/10, 4/10, 6/10で治療後に入れ替わっていた。また、1例で治療後に多様性指数が上昇しており、2例で低下していた。多様性指数が上昇した症例では著明に腫瘍縮小効果が得られていた。
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