研究課題/領域番号 |
17K15009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野口 智史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60732807)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非小細胞肺癌 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
前年度では公共データベースを用いて、非小細胞肺癌のバイオマーカー候補として抽出した遺伝子(CRIP1)が肺癌特異的に発現するものの、強いoncogenic functionは有していないことが分かったため、別の候補遺伝子を検索した。その結果、その発現量が予後および病期と相関する、ある低分子GTP結合タンパク質を見出した。当研究室と連携しているスウェーデンのウプサラ大学病理学教室が有する肺癌検体のRNA-seqデータでも同様に、遺伝子高発現と不良な予後との相関が見られ、肺がんのバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。さらに、遺伝子発現とDNAのメチル化との関連も示された。 当研究室が有している多数の非小細胞肺癌細胞株を用いてqRT-PCRを行った結果、正常気道/肺胞上皮細胞株にはその遺伝子はほとんど発現していないものの、一部の肺癌細胞株では高発現であることが分かった。しかし、複数の種類の抗体でウエスタンブロットを行ったが、mRNAレベルで高発現していると考えられる細胞株でも特異的なバンドは得られず、今後タンパク実験や肺癌組織での免疫染色を見据え、良質な抗体を模索していく。 次に、2種類の肺癌細胞株を用いて、siRNAで遺伝子発現をノックダウンし、細胞増殖能を調べた結果、コントロール群とノックダウン群とで増殖能に有意差は認めなかった。現在、浸潤能、遊走能の解析をすでに始めている。 また、レンチウイルスベクターで細胞株に同遺伝子を強制発現させる系がほぼ完成したため、同様に増殖・遊走・浸潤能など、癌細胞の機能・悪性度が変化するか解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バイオインフォマティクスを用いて、肺がんのバイオマーカー候補となる遺伝子が得られたが、レンチウイルスベクターの作成や細胞浸潤・遊走能を評価する実験系の最適化に時間がかかり、in vitroでの実験に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
既に良好なノックダウン効率を有するsiRNAは得ており、レンチウイルスベクターによる強制発現の系と共に、loss of function、gain of function両者で、肺癌細胞株を用いた細胞増殖、遊走、浸潤能の解析、in vivoでヌードマウスへの皮下注射による腫瘍形成能を解析する。免疫組織染色が可能な良質な抗体が入手できたら、肺癌の組織マイクロアレイを用いて、予後解析などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗がやや遅れたため。 細胞株を使った実験やマウス実験、肺癌組織の免疫染色に使用する。
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