研究課題
本研究では、理化学研究所により開発されたCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法による遺伝子発現解析により、肺癌の新規バイオマーカーを探索した。非小細胞肺癌細胞株と正常気道・肺胞上皮細胞のcDNAマイクロアレイデータおよびCAGEデータベースを統合し、肺癌細胞株で有意に発現が上昇している遺伝子をリストアップした。その中で、actin cytoskeletonと相互作用するアダプター分子として機能するCRIP1に注目した。CRIP1高発現株のH358、H1437において、siRNAによりCRIP1発現をノックダウンすると、細胞増殖が抑制された。colony formation assayではノックダウン群でコロニー形成が抑制される傾向があった。細胞周期解析、アポトーシス解析では有意差はなかった。組織マイクロアレイを用いたCRIP1の免疫染色では、高発現群は低発現群と比較し、予後が不良な傾向にあった。以上より、CRIP1は一部の肺癌に特異的に発現し、細胞増殖に関与するが、強いoncogenic functionは有していないことが示唆された。次にTCGAデータベースを用いて、肺腺癌の転移に関わる新規遺伝子探索を行った。正常肺と比較し肺癌組織で遺伝子発現が上昇し、かつリンパ節/遠隔転移群でも発現が上昇している遺伝子群を抽出した。その中で、Rhoファミリー低分子G蛋白RhoVに着目した。公共データベースのメタ解析では、RhoVが高発現だと予後が有意に不良であった。肺癌細胞株A549、H23において、RhoV遺伝子をノックダウンすると増殖能・遊走能が低下する傾向にあった。一方レンチウイルスベクターにより正常気管支上皮細胞BEAS2Bに同遺伝子を強制発現させたが、増殖能・遊走能は変化がなかった。今後組織マイクロアレイでの免疫染色を検討している。
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