研究課題
近年の新規薬剤の開発における恩恵にも関わらず、切除不能進行胃癌は依然として予後不良である。分子標的治療薬においては、抗体薬の初期耐性、耐性獲得が問題となっており、世界中で機序解明のための研究が行われている。HER2陽性乳癌では、ハーセプチン以外にも、ラパチニブ、ペルツズマブ、T-DM1といった抗HER2治療薬の有用性が承認されいるが、HER2陽性胃癌を対象に行われたT-DM1、Pertuzumabの大規模試験では有用性が証明されなかった。これは、胃癌が乳癌と異なり、形態、分子学的にも不均一な腫瘍であることが影響を与えたと考えられる。我々は、HER2陽性胃癌のハーセプチン治療における耐性機序を解明するために、前向き試験として治療前、治療中、治療終了の腫瘍生検から得られた組織検体を用いて、腫瘍増殖に関連する細胞膜受容体の免疫染色(IHC)ならびに次世代シークエンサー(NGS)による遺伝子変異ならびにCopy number変化(CNVs)を評価を行うこととなった。HER2胃癌における新たな治療バイオマーカーや治療標的の開発につながると考える。実際に得られた保存された腫瘍組織(FFPEブロック)から薄切を行い、IHCならびにNGS解析が可能な検体を評価した上で、各々の解析を順番に施行している。免疫染色では、治療標的にも成り得る代表的なHER2、EGFR、HER3、MET、FGFR、IGF-1Rの発現を評価した。実際に、治療中から治療後の評価で、HER2発現は6割の症例で消失していた。また、治療前と比較してIGF-1Rの発現している症例が、治療後で有意に増加していることを確認した。治療前の遺伝子変化では、TP53変異が高頻度で認められ、KRAS、BRAF、SMAD4、CDKN2A、CDH1の変異も頻度は少ないが確認されている。
2: おおむね順調に進展している
IHCならびにNGS解析の解析結果が得られてきており、全てのデータが集積されたのちに、患者背景や治療効果との関連性について統合的に解析をする予定である。
IHCならびにNGS解析の結果を統合的に解析する予定である。今後の研究発展のため、近年、ctDNAとしてHER2増幅を対象として抗HER2治療を行う臨床試験も散見される。実際に胃癌組織において、HER2遺伝子増幅とHER2タンパク発現にどれほど相関があるのか、また治療中の変化についてdegital PCR等で検討を行う。また、近年において、免疫チェックポイント阻害薬の有用性が認められており、胃癌における免疫関連遺伝子の発現についても、今後の治療開発の進展のため、解析を行う予定である。
当該年度に予定していた免疫染色ならびにNGS解析が進行中であるため、当該年の未使用額は次年度の物品費として充てさせていただききたいと考えております。当該年度の未使用額と次年度請求額の使用計画として、免疫染色、遺伝子解析にかかる物品費ならびに免疫関連遺伝子の発現解析の受託測定に使用する予定しています。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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