研究課題
近年の新規薬剤の開発における恩恵にも関わらず、切除不能進行胃癌は依然として予後不良である。分子標的治療薬においては、初期耐性、耐性獲得が問題となっており、我々は、HER2陽性胃癌のハーセプチン治療における耐性機序を解明するために、前向き試験として治療前、治療中、治療終了の腫瘍生検から得られた組織検体を用いて、今年度はHERコピー数、免疫関連遺伝子の発現解析を行った。HER2コピー数は、腫瘍組織からDNAを抽出し、digital PCRを用いて評価した。治療開始時、治療中、増悪時の検体を用いて、免疫染色強度との比較も行った。HER2のIHC 3+の症例ではHER2コピー数が高い傾向が認められる一方で、HER2 2+の症例はHER2コピー数が低値であった。ハーセプチン治療で奏効ならびに長期の治療成功期間が得られている症例では、治療無効の症例と比較して、治療前のHER2コピー数が有意に高い傾向が認められた。ハーセプチン治療増悪時にHER2の免疫染色発現が消失する(HER2 loss)の症例は、治療前のHER2コピー数が低値な症例に多く認められた。HER2コピー数は治療効果予測や治療モニタリングとして有用である可能性が示唆された。胃癌においては、免疫チェックポイント阻害薬の有効な症例は限定的で、約半数で効果が認められない。腹膜播種を有する症例では、無効な症例が多く、予後不良であると過去に報告されていた。我々は原発巣と腹膜播種の腫瘍組織からRNAを抽出し、nCounterを用い、免疫関連遺伝子の発現を網羅的に解析した。層別化クラスター解析では、原発巣と腹膜播種の間で、個人差を超えるような発現の違いは認めなかった。一方で、CD70、FAS、 MAF、IL-3等の発現は腹膜播種で高い傾向が認められた。免疫関連遺伝子の発現が高い症例は、EBウイルス陽性、HER2陽性症例で認められた。
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