研究課題/領域番号 |
17K15021
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西村 建徳 金沢大学, がん進展制御研究所, 特任助教 (10624869)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 葉酸代謝経路 / 幹細胞様形質 |
研究実績の概要 |
現在までにノックダウンに必要なshRNAのベクターを構築し、MTHFD1Lの発現量の異なる複数の乳癌細胞株株でノックダウンを行い、その表現型について、細胞増殖、アポトーシス誘導、幹細胞様形質を中心に解析を行った。 まずMTHFD1Lのノックダウンによる表現型の強弱はMTHFD1Lの発現量と相関することがわかった。これはMTHFD1Lの発現量がそのままバイオマーカーになることを示唆しており、現在、医療現場で既に使われているパラフィンブロックによる免染染色が可能かを検証している(今までのところ発現量はウエスタンブロットで確認)。表現型としては、細胞増殖は強く抑制されるものの(G1期での停滞が見られた)、アポトーシス誘導はさほど誘導されないようである。また幹細胞様形質についてはノックダウンにより、低下することを確認した。これは腫瘍原生能の低下と関連するので、術後補助化学療法としての使い方が有効であるかもしれない(逆に殺細胞性はないので、病期が後期の患者さんには少なくとも単剤での投与はあまり期待できないかもしれない)。 MTHFD1Lは葉酸代謝経路の酵素なので、おそらく細胞周期のG1期での停滞は核酸合成阻害によるS期への進行ストップが原因だと思われるが、その時、実際に停止を行っている因子についてはまだわかっていない。また、なぜ代謝酵素の発現量変化が幹細胞様形質の変化につながるのかはすぐには理解できない。この点について二年目の研究で明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に必要なツールや系を無事構築し、標的タンパク質の発現量の変化に起因する表現型についても解析を行うことができた。現象は捉えることができたので、次はこの結果を分子レベルで説明することが求められる。この実験を今後進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
MTHFD1Lのノックダウンによる細胞周期の遅延、幹細胞様形質の低下の分子メカニズムを明らかにするためにトランスクリトーム、メタボロームの統合解析を行い、その検証実験を遺伝子操作または化合物の添加実験を通して証明していきたい。 また、MTHFD1Lが本当に臨床でのターゲットになるかをより確かなものにするため、当研究室で確立した乳癌のPDXモデル、in vitro2次元培養系、in vitro3次元培養系(スフェロイド培養、オルガノイド培養)を用い、より患者さんの生体内に近い状態でのサンプルを使って、一年目に得た結果を検証したいと考えている。しかし、in vitroの実験ではPDXサンプルにおいても臨床検体においても、がん細胞と間質細胞の共培養系になっている。実際には両者を分けたほうがよいのかどうかについては詳細な検討を有する。
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次年度使用額が生じた理由 |
メタボローム解析、トランスクリトーム解析は次年度のはじめに行うことになり、そこで使うため、次年度使用額が生じた。当該研究において研究費が最もかかかる解析であるため、金額としては大きい値となった。
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