研究課題/領域番号 |
17K15025
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
國定 勇希 岡山大学, 大学病院, 医員 (10779416)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 制御性T細胞(Treg) / メトホルミン / 代謝 |
研究実績の概要 |
4つの腫瘍(RLmale1、MCA、MO-5、MethA)をマウス皮内に移植した。腫瘍移植後、5日目あるいは7日目からメトホルミン投与を行い、腫瘍径を経時的に測定したところ、全ての腫瘍において抗腫瘍効果が認められた。 マウスに腫瘍を移植し、メトホルミン投与群、非投与群に分けてそれぞれ解析した。腫瘍移植後、経時的に末梢の脾臓、腫瘍所属リンパ節と腫瘍組織を回収し、細胞を蛍光色素標識抗体(Foxp3、CD3、CD4、CD25など)で染色し、フローサイトメーターを用いてそれぞれの組織に浸潤しているTregの解析を行った。その結果、メトホルミン投与を行ったマウスでは脾臓と腫瘍所属リンパ節では有意差のある変化は認めなかったが、腫瘍内Tregは早期アポトーシスの増加を認め、腫瘍内Tregの割合は減少していることを明らかとした。また、Tregの最終分化とされているKLRG1とCD103の両分子陽性細胞の割合もメトホルミン治療を施した担癌マウスの腫瘍内Tregでは減少していることを確認した。さらに、Tregの抑制能を示すIL-10のサイトカインやCTLA-4分子の発現もメトホルミン治療を施したマウスにおいては、腫瘍内Tregにおいて減少を認めた。 代謝の変化に関して、2-NBDGやBODIPYでの観察は困難であったが、腫瘍内Tregの細胞表面にあるグルコーストランスポーターであるGlut1の発現は上昇しており、解糖代謝の亢進が認められることを明らかとした。また、ミトコンドリアの活性を示すMitosoxやTMREはメトホルミン治療群で有意に減少していた。 本研究により、in vivoのデータは滞りなく行うことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ研究計画通りに実験は進んでおり、順調である。
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今後の研究の推進方策 |
特に問題なくin vivoの実験は終了したため、in vitroでの実験を行っていく。 Tregは胸腺由来のnatural occurring Treg (nTreg)と局所で誘導されるinducible Treg (iTreg)に大別される。この2種類のTregにおいてメトホルミンの作用を詳細に解析し、どのような代謝変化が起きているか、またそれによりTregの動態がどのように変化するかを明らかにし、分子メカニズムの解明の足掛かりとする。 nTregをin vitroでメトホルミン存在下、非存在下で培養し、またメトホルミン処理後に抗CD3抗体、抗CD28抗体、TGF-β、IL-2により異なった条件で刺激培養を行い、Tregを増殖誘導する。刺激後、サンプルを回収し、各遺伝子や分子の解析をqPCR法やウェスタンブロット法により解析する。 non Treg細胞をnTregと同様にメトホルミン存在下、非存在下で培養し、メトホルミン処理後に前記と同様に異なった条件で刺激培養を行い、iTregを誘導し、同様に解析を行う。 Seahorse社のflux analyzerは細胞の代謝解析において非常に注目されており、同機器により、細胞の酸素消費量(OCR)とpH(ECAR)の変化により、TCA回路の亢進および解糖系の亢進をそれぞれ測定することが出来る。T細胞の機能解析においても非常に有用であり、同機器を使用した代謝変化が多く報告されている。 これらにより、メトホルミンの直接的な影響や代謝の変化について研究し、明らかにしていく。これらの方法が困難な場合は、免疫組織化学法などを用いて解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vivoの実験が滞りなく行われたため、抗体購入費が少額に抑えられた。次年度での新たな抗体購入費として使用予定である。
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