本研究は、通常型樹状細胞(cDCs)の活性化制御分子として炎症反応・抗原特異的T細胞応答・免疫病態を負に調節しているClec4A4分子を欠損しているマウスを用いて免疫チェックポイント分子として機能するか明らかにすることを目指している。平成29度は担がん状態でのClec4A4欠損マウスを用いて、Clec4A4のがん免疫応答制御に対する効果の解明を野生型マウスと比較検討を行った。実施内容は、「担がん状態でのClec4A4発現の動態の評価」と「担がんマウスの抗がんCD8+T細胞/CTL応答に及ぼすClec4A4の効果の評価」について検討した。その結果、野生型担がんマウスにおいてがん組織浸潤DCsの移入とClec4A4の発現が認められた。一方、Clec4A4欠損担がんマウスの脾臓DCsは、野生型担がんマウスの脾臓DCsと比較して、Clec4A4の発現レベルに差は認められなかった。さらに、担がん野生型マウス、担がんClec4A4欠損マウスにOVA&・TLRリガンド・アゴニスト抗CD40抗体のワクチンを免疫し、脾臓中の抗原特異的CTL(IFN-γ産生CD44highOVA-MHCクラスIテトラマー結合CD8+ T細胞)の誘導を比較検討した結果、野生型担がんマウスと比較して、Clec4A4欠損担がんマウスでは抗原免疫による抗原特異的CTL応答の亢進が認められた。これはClec4A4が担がん状態の生体内において抗原特異的CTLの誘導増強に関与することを示している。 以上の結果から、担がんでのDCs機能抑制と抗原特異的T細胞応答低下に対するClec4A4の制御が明らかとなり、Clec4A4がDCsに発現する新規免疫チェックポイント分子として機能的同定されることが期待される。
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