研究課題
2015年に腸内細菌叢が免疫チェックポイント阻害薬の効果予測因子となる可能性に関する論文が発表されてから,世界中で腸内細菌叢に関する研究・報告が数多く見られるようになった.当初は特定の菌種の存在が予測因子として考えられていたが,研究が進むにつれ,菌種の多様性や代謝生産物が効果予測因子として有効である可能性も論じられるようになってきた.我々は進行再発非小細胞肺癌に対し,肺癌診療ガイドラインに則り,抗PD-1抗体であるNivolumabまたはPembrolizumab単剤を投与された25例を対象とし,投与前と投与開始後3-4週毎の便を投与終了時まで採取し,それぞれ腸内細菌叢として16SrRNAシーケンスを行った.解析にはQIIME2を使用し,治療開始前の25サンプルと開始後も含めた全168サンプルそれぞれでα多様性,β多様性,特徴的な変動を示した菌種について解析した.25症例の患者背景として,平均年齢68.9歳,男女比は3:2,腺癌が17例,腺扁平上皮癌が4例,その他4例であった.最良効果判定はPR 7例,SD 6例,PD 12例であった.α多様性の解析では投与前の25サンプルでは有意差は見られなかったが,全168サンプルではPDとPR間(p=0.00043),PDとSD間(p=0.0012)に有意差が認められ,PDにおけるα多様性の中央値が最も高かった.β多様性の解析ではWeighted Unifrac距離の主座標分析(PCoA)で同じ群は菌種の組成とリード数が近くなる傾向が認められた.ANCOMによる変動菌種の解析では全168サンプルにおいて種のレベルでは数菌種で有意な変動が認められ,特に治療反応群では Prevotella stercoreaの存在が特徴的であることが有意差をもって認められた.
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