研究課題/領域番号 |
17K15029
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
立田 岳生 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (70438563)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リボヌクレアーゼ / 抗腫瘍効果 / 多剤併用 / 悪性中皮腫 |
研究実績の概要 |
本年度は、(1) 抗腫瘍性リボヌクレアーゼであるcSBLのリコンビナントタンパク質およびその変異体の作製、(2) in vitro におけるcSBL単独あるいは多剤併用時の抗腫瘍効果解析、(3) 悪性中皮腫Xenograftモデルの作製および in vivo におけるcSBLの有効性の検証、を行った。 (1) では野生型cSBLの他、取込み実験等での利用を目的とした変異体(ラベル可能なシステイン残基を新たに導入したもの)のリコンビナントタンパク質発現に成功し、一部精製済みであるが、大量確保を目標にさらなる精製が必要である。 (2) では、新規治療薬の開発が望まれている悪性中皮腫を対象に検討を行った。cSBLは、種々の悪性中皮腫細胞株に対して、強い細胞増殖抑制効果および高いがん細胞選択性を示した。2剤併用実験では、pemetrexed + cSBLが、高い相乗性を示し、この相乗効果は、pemetrexedの持つcyclin Aの持続的活性化による細胞周期停止作用とcSBLの持つアポトーシス誘導作用が協働することで引き起こされると考えられた。また、3剤併用時には、pemetrexed + cisplatin + cSBLおよびpemetrexed + cSBL + TRAIL が、相乗効果および抗腫瘍メカニズムの観点から、有望な併用法となりうると考えられた。 (3) では、2種の悪性中皮腫細胞株(H2452、MSTO)を用いて異種移植モデルマウスを作成し、in vivo におけるcSBLの抗腫瘍効果を観察した。通常動物実験に用いられる濃度のpemetrexed処理群と比較すると,cSBL処理群でより早期に腫瘍の増殖抑制が引き起こされ,同時にこの濃度においてマウスの有意な体重変化は生じず,cSBLは有害作用を示さない濃度において腫瘍増殖抑制効果を示すことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた (1) 種々のリボヌクレアーゼリコンビナントタンパク質およびその変異体の大量確保に関しては、おおむね順調だが、今後さらに精製量を増やす必要がある。 (2) in vitro における抗腫瘍性リボヌクレアーゼの作用機序解析ならびに変異体の利用や多剤併用を含めた抗腫瘍効果の効率化に関しては、上記の通り解析が進捗し、cSBL を含む多剤併用が悪性中皮腫に対し有効であることが明らかとなった。 さらに次年度に予定していた (1) マウスを用いた抗腫瘍性リボヌクレアーゼの安全性評価と投与方法等の検討および (2) 悪性中皮腫 Xenograft モデルの作製および抗腫瘍性リボヌクレアーゼの有効性の検証に関しても着手し、cSBL が in vivo においても抗腫瘍効果を示すことを明らかにしている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い、研究を進行する。また、抗腫瘍効果の作用機序解析では、cSBL 処理により発現が低下するがん遺伝子産物が見出された。そこで今後、その作用に着目した作用機序解析や、新規の併用解析なども行う。また、悪性中皮腫のみでなく、他のがん細胞でも解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質精製や作用機序解析に関する追加実験の費用と研究成果の学会発表や論文作成に用いる予定である。
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