研究課題/領域番号 |
17K15029
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
立田 岳生 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (70438563)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リボヌクレアーゼ / 抗腫瘍効果 / EGFR |
研究実績の概要 |
本研究の目的は抗腫瘍性リボヌクレアーゼを利用して、新領域のがん治療法の開発することである。 今年度はまず、抗腫瘍性リボヌクレアーゼに対する耐性化に関する知見を得るため研究を行った。リボヌクレアーゼ活性を有するウシガエル卵由来シアル酸結合性レクチン (cSBL) を長期間処理することにより樹立した cSBL 耐性悪性中皮腫細胞を用いて遺伝子マイクロアレイ解析を用いて行った。cSBL 耐性細胞において発現が上昇または低下する遺伝子を同定した結果、それぞれ 440、487、計 927 遺伝子が同定された。GO 解析およびパスウェイ解析の結果から、細胞増殖に関連する遺伝子や細胞膜上のタンパク質をコードする遺伝子の他、特に糖や脂質の代謝に関わる遺伝子に多くの発現変動があることが明らかになった。今後の課題として、今回同定された遺伝子のタンパク質レベルでの確認やその影響の解析などがあげられる。 また、これまでに報告のある ER や Bcl-2 および MAPK の発現・活性化に対する cSBL の効果に着目し、cSBL 処理乳がん細胞における、鍵分子(ER、PgRおよび HER ファミリー分子)や Bcl-2 ファミリー分子および MAPK の発現・活性化の調査を行った。その結果、興味深いことに、多数の細胞において、それぞれに発現する全てのHER ファミリー分子が減少し、cSBL は細胞種に関わらず HER ファミリー分子の発現を全般的に低下させる可能性が示唆された。 これらの情報を元に、cSBL の抗腫瘍作用機序の解明の他、cSBLの効果自体を高める方策や、有効な併用薬の探索など、cSBL を利用した新規のがん治療法の開発が期待できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、cSBL や他の抗腫瘍性リボヌクレアーゼの新規抗がん剤としての応用を目標に 1) 種々のリボヌクレアーゼリコンビナントタンパク質およびその変異体の大量確保 2) in vitro における抗腫瘍性リボヌクレアーゼの作用機序解析ならびに変異体の利用や多剤併用を含めた抗腫瘍効果の効率化 3) マウスを用いた抗腫瘍性リボヌクレアーゼの安全性評価と投与方法等の検討 4) 悪性中皮腫 Xenograft モデルの作製および抗腫瘍性リボヌクレアーゼの有効性の検証 5) 各種耐性細胞に対する抗腫瘍効果の評価と耐性克服へ向けた戦略の検討。ならびにそれらの in vivo における応用、を行う予定であった。 これまでに上記全ての実験に着手し、論文発表も行っているため、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い、研究を進行する。 耐性細胞を用いた実験から、cSBL の長期間暴露により発現に影響を受ける遺伝子産が複数確認されているので、そのタンパク質レベルの解析などを行う。また、cSBL は、EGFR の発現減少を伴う細胞死を誘導することが明らかになったので、その作用機序解析や、cSBLの効果自体を高める方策や,有効な併用薬の探索などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた状況として、耐性細胞の樹立とマイクロアレイ解析が順調に進み、条件検討等に必要な試薬などが節約できた点が挙げられる。翌年度分として請求した助成金と合わせ、タンパク質解析に使用する抗体など物品費を中心として使用していく予定である。また学会発表や論文投稿費にも使用する予定である。
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