研究課題/領域番号 |
17K15031
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
高野 直治 東京医科大学, 医学部, 講師 (80445410)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オートファジー / 細胞骨格 / マクロライド |
研究実績の概要 |
本研究は、マクロライド系抗生剤を「オートファジー抑制剤」としてがん治療に用いることを目指したものであり、1年目に当たる本年度は、その基盤となるマクロライド系抗生剤の細胞内標的の探索を中心に行った。 まず、マクロライド系抗生剤の1つ、azithromycin(AZM)の細胞内標的を調べる為、azithromycinの誘導体である3’-N,N-Di(desmethyl) Azithromycinを、磁性体ナノビーズであるFGビーズに固相化し、AZMビーズを作成した。このビーズを肺がん由来A549細胞抽出液と混ぜ、ビーズに結合するタンパク質を単離し、LC-MS/MSにて同定を行い、いくつかのAZM標的候補タンパク質を見出した。 次に、これらの標的タンパク質が実際にAZMに結合するか、リコンビナントタンパク質をHEK293T細胞で作成し、AZMビーズへの結合を確認した。また、内在性タンパク質がAZMに結合することも、特異的抗体を用いて同様に確認をした。 上記実験にて、AZMへの結合を確認したタンパク質のうち、protein-Xについてさらに研究を行った。まず、GFP融合protein-XをA549細胞に発現させ、AZM処理後の細胞内動態を観察したところ、protein-Xの細胞内でのダイナミックな動きを阻害することを見出した。これは、AZMがprotein-Xの機能を阻害していることを示唆している。 次に、protein-Xをコードしているgene-Xをノックダウンし、オートファジーの解析を行った。すると、Xのノックダウンによりオートファジーが抑制されることが明らかとなった。これらの結果は、AZMがprotein-Xの機能阻害を行い、その結果オートファジー抑制が起こることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の1番の目標であった、マクロライドの細胞内標的の同定に成功し、今後の研究の発展につなげることができた。 リコンビナントタンパク質、内在性タンパク質を用いた実験でマクロライドとの結合を示すことができた他、標的遺伝子のノックダウンによりオートファジーの抑制が見られたことからも、機能的な細胞内標的であると考えている。 その他、来年度の計画である動物を使った実験も予備実験を終え、手技的な問題点を洗い出すことができ、来年度も計画通りに研究を進めることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、動物を用いた実験を行い、in vivoにおける抗腫瘍効果の確認を行う。 また、複数の細胞内標的が見つかったため、あまり解析を進められていない他の候補分子についても研究を行う。 その他、がん幹細胞への効果を、発見した標的分子の機能と絡めて解析を行う。
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