研究課題/領域番号 |
17K15031
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
高野 直治 東京医科大学, 医学部, 講師 (80445410)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オートファジー / がん / マクロライド |
研究実績の概要 |
本研究は、マクロライド系抗生物質を「オートファジー抑制剤」としてがん治療に用いることを目指したものである。昨年度はマクロライドの1つアジスロマイシン(AZM)の細胞内標的タンパク質として同定したprotein-Xが、AZMによるオートファジー抑制に関わる重要な分子であることを示した。本年度はマクロライドのオートファジー抑制の「作用起点」について詳細に調べた。 他のオートファジー抑制剤であるクロロキン(CQ)、バフィロマイシン(Baf)と比較しながらの検討を行ったところ、AZM処理はリソソームのサイズを変化させること、リソソームの機能を阻害すること、そして、オートファゴゾームとリソソームの融合を阻害することを見出した。これらの作用からAZMがオートファジー抑制を行っていることを明らかとした。 また、マウスモデルを用いたマクロライドによる抗腫瘍効果の検証も行い、マクロライドを経口投与することで、マウスに毒性を示すことなく、移植した腫瘍の成長を有意に阻害することを明らかとした。現在、抗がん剤との併用による抗腫瘍効果の増強を検証している。 マウスモデルにおいて、経口投与したマクロライドが単剤で抗腫瘍効果を発揮した事は、現在臨床研究などに用いられている他のオートファジー抑制剤と同様にマクロライドがオートファジー抑制剤として利用可能であることを示唆している。マクロライドは長年臨床の場で実際に使われている薬剤であることからも、その意義は高い。 がん幹細胞の増殖抑制効果についての検討の準備も現在進めているところであり、その効果を他のオートファジー抑制剤と比較することで、マクロライドのオートファジー抑制剤としての位置づけが示されると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、マクロライドの細胞内標的を同定し、その分子の機能阻害実験等からオートファジー阻害に関与する分子であることを示した。また、オートファジー抑制が行われる作用点として、リソソーム機能、及び、リソソームとオートファゴソームの融合を見出した。そして、マウスを用いた実験にてマクロライドの単独投与によって抗腫瘍効果が発揮されるポジティブな結果が出たことからも、本研究が当初の予想から大きく外れずに進んでいると言える。マウスから取り出した腫瘍を用いた実験にて、マクロライドのオートファジー抑制効果と抗腫瘍効果の関連をきちんと示すことで、今後も本研究が着実に進んでいくと考える。 また、マクロライドの細胞内標的として、protein-Xの他にprotein-Yを同定し、それについても現在検討している最中である。複数の標的から多面的に検証を行うことで、より確実にオートファジー抑制の詳細な作用機序に迫りたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、担癌マウスモデルにマクロライドと抗がん剤の併用を行い、抗腫瘍効果の増強を検証する。また、取り出した腫瘍を詳細に検証することで、オートファジー抑制との関わりを示す。 また、マクロライドによるがん幹細胞の増殖抑制効果を検証し、他のオートファジー抑制剤との比較検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
キャンペーン価格等を利用した購入により、支出を抑えることができたことと、来年度予算と合わせて高額消耗品の購入に充てたい。
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