研究課題
本研究では、オートファジー抑制剤としてのアジスロマイシン(AZM)の細胞内標的の同定、及び、AZMによるオートファジー抑制の分子機構の解明を目指し、また、抗腫瘍効果の確認と、抗がん幹細胞効果の検証を目指したものである。最終年度までの研究から、AZMに結合するタンパク質を複数同定し、その結合タンパク質の機能阻害によってオートファジーを阻害できることを示し、AZMのオートファジー抑制の細胞内標的を同定できたと考える。また、AZMによって起こるオートファジー抑制の分子機構を明らかとした。AZMがオートファゴソームとリソソームの融合を阻害しないが、リソソームの酸性化、及びタンパク質分解機能を抑制すること、また、細胞内に多くのオートリソソームを蓄積させることを見出した。しかしながら、他のオートファジー抑制剤であるハイドロキシクロロキン(HCQ)やバフィロマイシン(Baf)と異なり、細胞毒性が非常に低いこと、シャペロン介在性オートファジー(CMA)の抑制は低いことを見出した。CMAの抑制は、がん幹細胞機能にも重要なHIF-1aの分解を抑制し、細胞内の蓄積と下流の遺伝子発現を上昇させる。HCQやBafといった他のオートファジー抑制剤がCMA抑制を介したHIF-1aの誘導を引き起こしてしまうが、AZMはCMAの抑制が低いため、HIF-1aの上昇、そして下流の遺伝子発現の誘導が著しく低く抑えられていることが明らかとなった。この結果は、HCQが行う、オートファジー抑制によるがん幹細胞機能の抑制と、HIF-1aの発現上昇によるがん幹細胞機能の上昇という矛盾を、AZMが解消することを示唆している。その他、マウスに移植した腫瘍の成長がAZMの経口投与により抑制されること、また、取り出した腫瘍内でオートファジーが実際に抑制されていることを示し、臨床応用への可能性を示すことが出来た。
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