研究課題/領域番号 |
17K15032
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
田中 薫 近畿大学, 医学部, 講師 (80548628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分子標的治療 / ALK阻害剤 / 薬剤耐性 / 非小細胞肺癌 |
研究実績の概要 |
本研究は、ALK融合遺伝子陽性進行再発非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象にALK阻害剤での治療後の腫瘍組織および血液検体を用いて薬剤耐性機序を分子生物学的に解明し、薬剤耐性克服のための新たな治療標的を同定することを目的とし行っている。また、新たな耐性機序を示唆する分子学的変化が検出されれば、in vitro、in vivoにおいて生物学的な特性を確認し、その克服のための治療戦略を検討する予定である。平成29年度末までに9例のALK-TKIに耐性を獲得したEML4-ALK融合遺伝子陽性肺癌患者から本研究への参加同意を取得し、治療前後の腫瘍組織検体及び血液検体を可能な限り収集した。EML4-ALK融合遺伝子陽性肺癌患者では、治療効果により治療後の再生検を行うことが困難な症例が多くみられるが当院では5例において治療後の再生検が施行され、収集した検体から抽出したDNAを用いて体細胞遺伝子変異解析を行うことができた。残念ながら治療前の保存検体で十分な試料が回収できた症例が少なく、治療前後両方の腫瘍組織検体が収集できたのは3例のみであったが血液検体は全例で採取し今後解析の予定である。治療後の再生検検体を用いた検討では、3症例からそれぞれ、L1196M、G1202R、V1180Lの3つの既知のALK遺伝子の2次変異が検出された。当初の予定よりも症例集積が遅れているが、本研究の経過並びに得られた知見については平成30年度の日本臨床腫瘍学会や日本肺癌学会等の関連学会で報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EML4-ALK融合遺伝子陽性肺癌患者では治療効果により治療後の再生検を行うことが困難な症例が多くみられるが、当院では5例において治療後の検体採取が可能であった。また、再生検検体から抽出したDNAを用いて体細胞遺伝子変異解析を行い、3症例からそれぞれ、L1196M、G1202R、V1180Lの3つの既知のALK遺伝子の2次変異が検出された。症例集積は遅れているが、上記の経過から我々の耐性機序探索の研究体制は十分に機能しており、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
50症例を目標に症例集積を継続、各種測定を実施しデータベースを構築する。また、得られた情報より新たな耐性機序と考えられる二次的な遺伝子変異や側副経路などが同定されれば、腫瘍細胞を用いたin vitro, in vivoにおける生物学的な検討を行う。具体的には新規標的分子候補の強制発現細胞株を当科で所有するALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌細胞株であるH3122細胞に導入し、その薬剤耐性や生物学的な特性を確認する。また、ウェスタンブロッティング法を用いてシグナル経路の変動を検討し、耐性克服のための手段を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より症例集積が遅く、想定したほど経費を必要としていないため。次年度の経費は症例が集まった際に腫瘍遺伝子プロファイル網羅的解析のための分子生物学試薬および消耗品に使用する予定である。
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