研究実績の概要 |
乳癌は、原発巣のホルモン受容体(HR)・HER2発現が再発時に変化することが知られており、免疫環境の変化については不明な点も多い。本研究において、再発乳癌患者において、原発巣と再発巣でのTILの発現変化について解析した。 当院で原発性乳癌の切除手術が行われた後に再発し、再発巣の生検・切除手術が行われた症例のうち、HR・HER2発現が原発・再発巣ともに調べられていた173症例を対象とした。TILは、癌周囲の間質にリンパ球が占める割合を評価し、10%以上を高発現とした。 再発巣の内訳は、肝転移33例 (19%)、肺転移47例 (27%)、骨転移28例 (16%)、皮膚・軟部組織転移27例(15%)、リンパ節転移24例 (14%)、その他14例 (8%)であった。原発巣はHR陽性148例 (86%), HER2陽性 19例 (11%)であった。原発巣と再発巣の比較では、原発巣のER陽性143例中10例 (7%)、PgR陽性121例中47例 (39%)、HER2陽性17例中1例 (6%)において再発巣で陰転化していた。逆に、ER陰性24例中6例 (25%)、PgR陰性45例中9例 (20%)、HER2陰性118例中8例 (7%)において再発巣で陽転化していた。結果、全体の15%において再発巣でサブタイプの変化を認めた。原発巣のTILの発現はサブタイプと強い相関を認め、Luminal (HR+HER2-) 18例 (24%)、Luminal/HER2 5例 (36%)、HER2-enriched 3例 (75%)、Triple-negative 9例 (60%)においてTILの高発現を認めた (p<0.001)。再発巣においては、サブタイプに関わらず、転移臓器と有意に相関し、肺転移症例でTILの高発現を認めた (TIL高発現:肝転移6%, 肺転移39%, 骨転移12%, 皮膚・軟部組織転移8%, リンパ節転移19%, p=0.002)。 乳癌の再発巣ではがん細胞・免疫環境ともに変化しており、今後さらなる解析が重要である。
|