スクリーニングの基盤整備のためゲノム編集を効率化させる新規技術を開発し、Local Accumulation of DSB repair molecules (LoAD)と命名した。これは、ゲノム編集を適用する領域にDNA修復因子を効果的に集積させることによって、目的の遺伝子改変効率を上昇させる技術である。同法の開発によって、培養細胞における正確な遺伝子挿入(ノックイン)効率の上昇や、同時多重ノックインの実用化、さらに小規模な塩基欠失を優先的に誘導することが可能になった。またこれらの成果については、筆頭著者として論文をNature Communications誌に発表を行なった。 本研究に用いる乳がん細胞株は遺伝子導入効率が低かったが、LoAD法の開発によってスクリーニングに関連した改変細胞を効率的に樹立する環境整備が完了したので、続いてスクリーニングに使用するウィルスベクターの乳がん細胞株における遺伝子導入効率について評価及びCas9タンパク質を恒常的に発現する乳がん細胞株の作製を実施した。 まず、乳がん細胞であるMCF7とMDA-MB-231におけるsgRNAライブラリー及びCas9恒常発現株作製用のレンチウィルスベクターの力価評価を行った。これについては、ウィルスベクターを導入した乳がん細胞に最適な抗生物質を処理し、生存細胞の数を測定および比較することによって実施した。また算出した力価に従ってCas9恒常発現用ベクターを乳がん細胞株に導入し、Cas9タンパク質恒常発現株を作製した。以上の成果により、スクリーニングに関連した環境整備が完了した。
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