研究課題/領域番号 |
17K15047
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
LIN JASON 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ がん遺伝創薬研究室, 博士研究員 (80774124)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ケミカルバイオロジー / バイオインフォマティクス / ゲノミクス |
研究実績の概要 |
癌遺伝子の主蛋白質を標的にすることで革新的ながん治療法が開発されているが、治療薬の開発が難しい標的分子も多い。ピロールイミダゾールポリアミドは、 DNA副溝に結合することによって、DNAを直接標的にできる化合物である。以前の結果により、様々なPIPが癌細胞株およびマウス生体内で増殖を阻害することが確認されている。しかし、大半のPIPは8から10塩基認識であり、ゲノム内には多くの結合配列が存在する。このため、PIPの治療効果、毒性や副作用などの安全性を予測することが困難と考えられる。今年度の研究では、ピロールイミダゾールポリアミドによるがんゲノムとの結合および臨床的な副作用の予測が重点になり、その成果を論文として発表した。今年度の研究費は、主に論文掲載料や上記の研究を遂行するためのスーパーコンピューターの使用料および学会発表などの旅費に当てられた。
1、ピロールイミダゾールポリアミドによるがんゲノムへの影響について結合サイトの測定では、一部のアルゴリズムは「Journal of Open Source Software」(JOSS) に掲載された。この論文では、統計的なモデルを作成し、可能な候補サイトが網羅的に測定できると考えられる。など、この研究を遂行するにあたって、医科研のスーパーコンピューターの使用料およびコンピューター部品を購入した。
2、機械学習法を用いたピロールイミダゾールポリアミドによる機能・臨床的な副作用についての論文は、「PLoS ONE」に掲載された。 この研究を遂行するにあたって、 学会参加料および約18万の論文掲載料として補助金を利用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
機械学習のためChem-seqコントロールデータセットの作成実験がまだ完了していないため進度がやや遅れなりと考えている。しかし現在までモデルのエラーレート精度が合理に低くなくので成果的な影響があまりないと考えられる。一方、アルゴリズムの開発では、コルモゴフースミルノフ分布をモデルにしたピーク測定方法が検討されたため(Lin et al., JOSS 2019)、現在の進捗遅れでは全体的な進捗状況が影響されない。
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今後の研究の推進方策 |
最初の計画を予定通りに実行し、人工染色体を用いたChem-seq実験を行う予定である。2019年度では、開発したSPC検出結果を実験からの配列決定結果に基づき検証し、他の解析方法と比較する。2018年度までに開発されたアルゴリズムのソースコードを公開する予定であり、パフォーマンス次第必要なコンポーネントを大規模なデータ解析で最適化する。PIP-SAHAなどの非アルキル化PIPのような異なるPIP機能分子複合体によるゲノム修飾においても、この最適化したSPC及びChem-seq実験プロトコールよりpeakを検出し、新しいトレーニングセットを用いて検証し、本研究の解析プラットフォームの拡張性を評価する。既存のデータセットと新しいPIP実験から得られる大量、十分量のデータからPIP-DNA相互作用の化学的性質を解明・理解でき、遺伝子の相互作用ネットワークを介して、基礎となる生物学的メカニズム及び遺伝子発現のクラスタリングを可能とすると考えられ、これを遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度では、元に計画したヒト人工染色体を用いたChem-seq実験をまだ完了していないため、次年度で進行予定と考える。それに伴い、今年度の研究費の一部を保留した。
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