研究課題/領域番号 |
17K15049
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊地 正隆 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (90722538)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / マルチオミックス / データベース |
研究実績の概要 |
これまでアルツハイマー病(AD)患者死後脳で測定された様々なオミックスデータ(一塩基多型(SNP)、コピー数多型(CNV)、mRNA量、マイクロRNA量など)が解析され報告されてきているが、単一のデータセットに由来する解析結果には、少サンプル数の問題や多くの仮説検定を行うことに起因する偽陽性が生じており、異なるサンプル集団では再現性が取れないことがしばしばある。この問題を解決する手段の一つとして、公共データベース(DB)に蓄積されてきた利用可能なデータセットを再解析し、各データセットで算出された統計量を統合するメタアナリシスを行うことが有効である。本研究では公共DBに蓄積されたADに関連する様々なオミックスデータを整備し統合DBを構築する。さらにメタアナリシスツールを開発するとともに、AD患者死後脳データを用いデータドリブンに分子パスウェイを推定しDBに格納する。 平成29年度はADに関する公共データの整備およびDBサーバーへの格納を行った。公共データの整備についてはデータを再解析するためのワークステーションを購入し解析環境を整備した。またデータ再解析パイプラインとしてRNA-seqの解析パイプラインを整備するとともに、主にマイクロアレイデータの解析を行う統計解析ソフトウェアのライセンスを購入し解析が行えるように準備した。DBサーバーへの格納についてはDB管理システムを整備するとともに公開用のWebサーバーの準備も進めた。また来年度以降に行う予定であるデータ解析についても一部の遺伝子発現データセットについては共変量(性別、APOE4アリル数など)を加えた二項ロジスティック回帰分析を行い各遺伝子に関する統計量を算出した。またcis-eQTL解析についても異なるデータセットにおいてすでに総計7億2,000万のeQTLについて統計量を算出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り公共データの整備を行い、データ再解析パイプラインの構築ができている。また公開DBの準備も進んでいる。来年度以降に行う予定であるデータの再解析においても一部のデータに関しては共変量を加味した二項ロジスティック回帰分析を行い各遺伝子に関する統計量を算出ができている。cis-eQTL解析に関してもeQTL統計量を算出するなど、計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
データの再解析を進め算出した統計量をDBサーバーへ格納する。また各データセットで算出した統計量を統合し解析するメタアナリシスツールの開発を行う。メタアナリシスではデータセットごとに算出されたβ値やp値をFisher法(1925)やStouffer法(1949)により統合することでデータセットを通した各分子の疾患への寄与を評価する。さらに遺伝子の周辺のメチル化量や相補的に結合し得るマイクロRNAなどのメタ統計量を総合しスコアリングする。これにより複数のオミックス情報を考慮した遺伝子を探索できるようにする。さらにWebサーバー上で各遺伝子やSNPの数値情報を可視化するツールを用意する。DNAメチル化データや発現データに関しては遺伝子名をクエリとして、データセットごとに①健常者群とAD患者群別、②死亡時年齢別、③病理学的ステージ別にDNAメチル量や発現量のプロット図を表示できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度はデータの可視化やメタアナリシスを行うツールを開発する予定である。そのためツール開発に必要となる環境整備に充当する。またその国内外の学会において情報収集や成果発表をする予定である。
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