研究課題/領域番号 |
17K15050
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菅原 武志 広島大学, 理学研究科, 研究員 (60713005)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 3Dゲノム地形 / 核内染色体構造 / データ駆動型数理モデリング / 細胞周期・細胞分化 |
研究実績の概要 |
本研究は、「遺伝子の総体であるゲノムの核内構造」が細胞周期または細胞分化依存的にどのように変化するかを数理的に解明することを目的とし、Hi-Cデータ駆動型モデリング手法により細胞周期進行または細胞分化過程での「ゲノム3D構造の自由エネルギー地形」を定量・可視化し、細胞状態変化に伴うゲノム構造変化を俯瞰的・統一的に記述する点に本研究の特色がある。 本研究計画のうち、平成29年度は計画通りHi-Cデータ駆動型染色体構造モデリング・計算機シミュレーション環境(プラットフォーム)の開発を遂行した:(1) ゲノムワイドクロマチン相互作用頻度(contact map)データ作成、(2) 計算機シミュレーションプラットフォーム構築、(3) シミュレーションの実行。最大エントロピー法を用いてゲノム構造をサンプリングするアルゴリズムを構築。 構築したアルゴリズムを用いてシミュレーションを実行し、現在まで幾つかの場合についてゲノム構造の推定に成功した。今年度から学会等で発表し、専門家との議論を通してより質の高い結果にまとめていく予定である。 また、クロマチン動態およびゲノム構造に関連する論文2報が掲載され(Arai et al. Scientific Reports 2017, Sugawara et al. Dev Growth Differ 2017)、本研究成果を論文にまとめるにあたり事前の重要な業績を追加できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度はHi-Cデータ駆動型染色体構造モデリング・計算機シミュレーション環境(プラットフォーム)の開発を遂行した。以下のようにして概ね計画書通り遂行できたが、課題も残った: (1) ゲノムワイドクロマチン相互作用頻度(contact map)データ作成。データベースGEOから公開Hi-Cデータをダウンロードし、Hi-C塩基配列データをマッピング・contact mapを作成し、分裂酵母のG1・G2期、マウスES細胞・神経幹細胞・アストロサイトについてcontact mapデータを取得した。 (2) 計算機シミュレーションプラットフォーム構築。染色体構造の計算には大規模計算を必要とし、並列計算アルゴリズムを組んだ。現在申請者はワークステーション用の並列化アルゴリズムを構築しシミュレーションを行っている。また「推定された染色体構造の可視化」の環境構築も行った。 (3) シミュレーションの実行。最大エントロピー法を用いてゲノム構造をサンプリングするアルゴリズムを構築し、幾つかの場合についてゲノム構造の推定に成功した(データ非公開)。しかし他方で、ラグランジュ未定乗数を求める段階で計算がしばしば収束しない問題が残り、高効率性を維持しながら常に収束するようなアルゴリズムに改良する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では「ゲノム構造を推定するアルゴリズムにおいてしばしば計算が収束しない問題」が課題として残った。具体的には最大エントロピー法でのパラメータであるラグランジュ未定乗数を求める際に用いる準ニュートン法が収束しない場合がある。これを克服するためには求める解に比較的近い初期値を予め推定する必要があり、現在このアルゴリズムを開発中である。 平成30年度ではアルゴリズムを完成させ、計画書にあるとおり、分裂酵母のG1・G2期、マウスES細胞・神経幹細胞・アストロサイトについてのゲノム構造推定を行い、学会発表を通じて宣伝していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度計上した旅費の分をハイスペックな計算機購入に当てたため、その差額分28,099円を生じた。 差額分を平成30年度の計算機周辺機器の購入に当てる予定である。
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