研究課題/領域番号 |
17K15051
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小野口 真広 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (30645297)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ChIRP-MS / piRNA / flamenco |
研究実績の概要 |
本研究ではpiRNA生合成経路の網羅的解析を行うため、piRNA前駆体であるflamenco(flam)に対しChIRP-MSを行い、flamと相互作用するタンパク質因子を網羅的に同定することを試みた。まず、十分なシグナルを得るために、flamのpiRNA産生に必要なRNA領域を3’UTRにもつGFPを恒常的に発現するOSC株を作成した。先行研究により、このGFPの3’UTRからpiRNAが産生されることが確認されている。次に、ChIRP-MSの実験系の最適化として、細胞数、細胞固定法及びソニケーションの条件検討を行った。その結果、本研究で使用するセルラインであるOSCに最適な条件を見出した。さらに、作成したOSC株を用いてflamに対するプローブを使用してChIRP-MSを行ったところ、コントロールに比べ有意に複数のタンパク質が検出された。これらのタンパク質群にはすでにpiRNA生合成経路に必須であることが報告されているものやPIWI結合因子を多数含んでおり、実験系がうまく機能していることが確認された。さらにこれまでに報告のない未知の因子も複数同定されている。これらは核外輸送タンパク質、EJC complex, splicing factor, ER局在タンパク質、ミトコンドリア局在タンパク質、クロマチン結合因子などその局在と機能は多岐にわたっていた。先行研究から考察すると、これらの結果はpiRNA生合成に重要な経路を網羅していると推測される。以上の結果より、ChIRP-MSが本研究の狙い通りpiRNA生合成経路の網羅的解析に非常に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はChIRP-MSのOSCでの最適化及び実施が目標であったが、最大の課題であった最適化が成功し、OSCでもChIRP-MSが十分に可能であることがわかった。さらに、flamに結合するタンパク質因子を複数同定することに成功した。これらタンパク質因子群の中にはすでにpiRNA生合成因子として報告のあるものが複数含まれており、実験系が十分機能していることが確認できた。その上で未知の因子も複数同定されており、本研究の進捗状況は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果により、flam結合タンパク質因子が複数同定された。今後の解析方針としては、これらの結合タンパク質のうち、先行研究からpiRNA生合成に重要であると推定されるものを中心に、機能阻害などの実験を行い、解析を行う予定である。また、ChIRP-MSにより同定されたタンパク質は細胞内局在や機能が様々であるが、いくつかの大きなクラスターに分類できる可能性がある。そこでバイオインフォマティクスの手法を用いて、flam結合タンパク質群を分類し、生合成経路の推定を試みる予定である。
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