研究課題/領域番号 |
17K15062
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
茶谷 悠平 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (30794383)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 翻訳 / リボソーム / 翻訳伸長 / peptidyl-tRNA |
研究実績の概要 |
概要:新生ポリペプチド鎖による翻訳途中のリボソーム複合体の不安定化現象(Intrinsic ribosome destabilization : IRD)が、大腸菌mgtL-mgtAオペロンにおいて巧みに利用され、細胞内Mg2+濃度の恒常性維持に寄与していることを明らかにし、論文として発表した(Chadani et al., 2017)。またIRDを誘発する負電荷アミノ酸に着目し、同様の制御がなされていると予想される遺伝子を探索したところ、大腸菌で複数のIRD依存的な遺伝子発現制御が行われていることを見出した。またある遺伝子では、IRDを利用した特異な翻訳反応が行われていることを見出した(論文投稿準備中)。この翻訳動態をヒントに、現在IRD発生の分子メカニズムについて解析を進めている。 遺伝学的スクリーニング:当初の計画に記載したmgtL-mgtA制御系をベースとしたIRD関連遺伝子のスクリーニング系は十分に機能しなかったので、現在別のIRD誘発モチーフをベースとしたスクリーニングについて進行中である。得られた候補について解析を進めており、また新たな解析候補についても順次探索を進めていく。改変型リボソームを用いた実験は想定外の挙動を示したため、当初計画していた実験は困難な事が明らかとなった一方、IRDの発生メカニズムについての示唆を得ることが出来た。現在この結果に関しては、前項の投稿予定論文にデータを掲載できるよう準備している。 構造解析:当初予定していたIRD途上の翻訳複合体の構造解析に関しては、1. 不安定化しつつある翻訳複合体を安定に保持するという矛盾した実験目標に困難が多いこと、2. 大腸菌S30 extractからのPth(peptidyl-tRNA hydrolase)の除去などに問題があり、当初予定していた構造解析は断念し、別方向からの解析を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画とは異なるアプローチからではあるが、新生ポリペプチド鎖によるリボソームの不安定化現象(IRD)について、メカニズム、生理学的意義とその利用例が明らかになりつつある現状から、当初予定していた以上の進展をしていると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝学スクリーニングなどから得られたIRDに関連した遺伝子変異株の解析から、IRDの発生に特定の翻訳因子の修飾状態が影響している事が示唆された。同修飾部位に関しては生理学的意義などが一切明らかでない。そのため、同修飾の有無によるリボソーム複合体の構造への影響を構造解析、比較定量プロテオミクス解析(SWATH法)などを合わせて解析を進めていく。 また、新生ポリペプチド鎖が原核70Sリボソームだけでなく、より構造的に安定と考えられる真核80Sリボソームにおける翻訳伸長も途上終結させ得るかを、再構成無細胞翻訳系などを活用し、検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度研究で重要となる基礎データ取得のために、新規に実験機器を購入する必要があったため。
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