研究課題/領域番号 |
17K15068
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
夏目 豊彰 国立遺伝学研究所, 分子遺伝研究系, 助教 (10435513)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MCMヘリカーゼ / コヒーシン / オーキシンデグロン法 / SMC5/6複合体 / 細胞周期特異的分解 |
研究実績の概要 |
本研究は、オーキシンデグロン法を駆使し、MCM複製ヘリカーゼや、染色分体接着因子コヒーシン及び他のSMC複合体の機能とこれら因子の共役の解析を目的としている。 本年度はまず、ヒト細胞を用いてMCMヘリカーゼ及びコヒーシンのデグロン細胞の構築を行った。次に、ヒトHCT116細胞株を中心として、細胞周期同調下でのこれら因子の分解と表現型の解析を行った。<MCMヘリカーゼ>HCT116細胞においてG1期にMCMヘリカーゼを分解すると、DNA合成を伴わずに細胞周期が進行し、最終的にG2期で停止する興味深い表現型を得た。また、S期に複製フォーク上のMCMヘリカーゼを分解すると、パラログであるMCM8-9ヘリカーゼ依存的なバックアップDNA合成が生じることを見いだし、論文発表した。<コヒーシン>G1期に分解した場合、S期の進行には大きな問題がないという当初の予想に反して、G1後期の制限点の手前で停止することがわかった。一方、G2期に分解した場合は、予想通り、M期における染色体の分配異常が見られた。このように、細胞周期特異的に分解することにより、これまで見逃されてきたMCMヘリカーゼやコヒーシンの役割が見え始め、次年度以降の分子メカニズムの解析の土台が出来上がった。 さらに、出芽酵母においてコヒーシンと染色体上の局在パターンが類似して強い機能的関連がある、SMC5/6複合体のデグロン株の作成も進め、本因子の表現型解析の準備が整った。もう一つのSMC複合体であるコンデンシンに関しては、共同研究において、細胞周期特異的な分解を行う事により、分裂期染色体における役割を明確に示すことができ、論文発表をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれの因子のデグロン株の作成と解析がおおむね予定通り進み、興味深い表現型が見え始めてきた。一方、MCMヘリカーゼとコヒーシンの共役の解析が少し遅れているため、次年度に集中的に行う。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の予定通りに今後も研究を進める。特に、HCT116細胞のみではなく、RPE-1細胞などの他のヒト細胞種も同時に解析することにより、観察される現象の普遍性や違いを確かめる。また、MCMヘリカーゼとコヒーシンの共役に集中的に取り組み、さらに、MCMヘリカーゼ及びSMC複合体間の機能連携にも特に注目する。計画にもあるとおり、遺伝学的解析や生化学的な解析にも取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初本年度に開始を予定していたクロマチン免疫沈降や質量分析実験を次年度に実行するように変更したため、それに必要な試薬消耗品等は次年度に購入する。
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