研究課題/領域番号 |
17K15070
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田根 将志 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (40770516)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コンデンシン / 染色体形成 / CDK1 / リン酸化制御 / タンパク質修飾 |
研究実績の概要 |
コンデンシンⅠは、染色体構築過程において中心的な役割を果たすタンパク質複合体である。我々はこれまでに、分裂期キナーゼCDK1 によるコンデンシンⅠのリン酸化が染色体再構成に必要かつ十分なタンパク質修飾であることを示してきた。本研究では、個々のリン酸化反応がコンデンシンⅠの機能をどのように制御しているのかについて明らかにしていくことを目的としている。 本研究の主な解析方法として、昆虫細胞を用いて組換えコンデンシンI複合体を発現・精製し、内在性コンデンシンを除去したカエル卵抽出液へ精製した複合体を添加し、それが引き起こす染色体形態の変化を観察している。昨年度、精製した複合体に若干の技術的懸念が生じていることが判明したが、コンストラクトおよび精製方法の見直しを行ったことで、ほぼその問題を改善することができた。 本年度はさらに他の候補部位にも対象を広げ、計14ヶ所の CDK1 リン酸化候補部位をアラニン変異に置換した組換えホロ複合体(14A 変異体)を作製し、その変異体が引き起こす染色体形態の異常について観察を行った。その結果、野生型に比べクロマチン上の 14A 変異体がやや低下しており、太い染色体が観察された。しかしながら、依然として染色体構造の形成を観察することができるため、今回調べた候補部位以外のリン酸化も染色体形成に関与していることが示唆される。 現在までに、in vitro において、組換えcyclin B1 / CDK1 によってリン酸化された組換えコンデンシンI サブユニットの質量分析によるリン酸化部位の同定も試みている。この結果から見出されたリン酸化部位を含む計20ヶ所の CDK1 リン酸化候補部位をアラニン変異に置換した組換えホロ複合体(20A 変異体)を作製し、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計14ヶ所の CDK1 リン酸化候補部位をアラニン変異に置換したことにより、十分とは言い難いが、染色体の形態異常を観察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 作製した 20A 変異体をもちいて、内在性コンデンシンを除去したカエル卵抽出液中で機能解析を進める。 (2) カエル卵抽出液中において、CDK1 以外のM期関連キナーゼが組換えコンデンシンIによる染色体形成へ影響を与えているかどうかを調べる。 (3) 精製タンパク質を用いた試験管内再構成系へ、野生型および変異型組換えコンデンシンⅠ複合体の導入を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではこれまでに、計14ヶ所のCDK1 リン酸化候補部位をアラニン変異に置換した組換えコンデンシンⅠ複合体を作製し、内在性コンデンシンを除去したカエル卵抽出液においてこの変異型複合体の機能解析を行ってきた。しかし、これまでに調べた候補部位以外のリン酸化も見出しており、これらのリン酸化による染色体形成への影響を詳細に調査するためにはさらなる時間を要する。
組換えタンパク質の発現・精製や機能解析にかかる試薬等の購入・カエルの飼育費用に使用する。
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