研究課題/領域番号 |
17K15071
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
喜多 俊介 北海道大学, 薬学研究院, 特任助教 (10702003)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カイコ / 昆虫 / 脂質輸送 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
カイコリポホリンの単粒子構造解析を進めた。これまでに低分解能ながらリポホリン粒子の構造決定に成功しており、本年度は、精製方法と電子顕微鏡のクライオ条件の検討を行い、さらにリポホリンが輸送している脂質の解析に着手した。リポホリンはカイコの体液から密度勾配超遠心法とゲルろ過クロマトグラフィーで精製している。これまでは、精製に用いているバッファーは中性条件であったが、精製バッファーのpHを弱酸性から中性まで展開したところ、ゲルろ過クロマトグラフィーのピークはより単一となり、ネガティブ染色法では単分散の粒子が観察された。クライオ電子顕微鏡で観察するグリッド作製の条件検討として、グリッドの種類、サンプル濃度、界面活性剤の添加などを検討したが、劇的な改善には至っていない。リポホリンが輸送する脂質の解析においては、リポホリンから脂質を抽出し、TLCで展開して標準サンプルと比較した。カイコ体液より精製したリポホリンは、リン脂質を含む複数種類の脂質と結合していることが判明した。 また、本年度はカイコの脂質輸送粒子の1つであるLTPについて、構造生物学的研究と生化学的研究を新しく始めた。LTPはリポホリンと脂質の受け渡しを行うことが知られている。カイコLTPについてもリポホリン同様にカイコ体液から精製し、ネガティブ染色による観察を行い、LTP粒子が頭部と尾部から形成される特徴的な形状を有していることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カイコのリポホリン粒子の立体構造解析に向けて、最適な精製条件を決定した。リポホリンとともに脂質輸送に携わるLTPについても調製系を確立し、ネガティブ染色像を得た。リポホリンが輸送する脂質の解析も着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きリポホリンの立体構造解析を進める。クライオ電子顕微鏡によるデータ収集に向けて、引き続きグリッド調製の条件を検討する。リポホリンの構成要素の1つである、apoLp-IIIについては、組換え発現系を用いて調製を始める。調製後は、脂質との結合実験、X線結晶構造解析などに着手する。リポホリンが輸送している脂質の解析は、質量分析装置を用いて、詳細な解析を始める。 カイコのLTPについては精製条件を展開し、ゲルろ過クロマトグラフィーの溶出位置、ピーク形状、電子顕微鏡における粒子形状から評価する。最適な条件を見いだした後は、クライオ電子顕微鏡を用いた観察へと移行する。また、高速AFMを用いて、LTPの溶液中での動的な構造変化を観察する。 最後に、リポホリンとLTPが複合体を形成するかをゲルろ過を用いて調べ、複合体を形成した場合は、粒子形状を電子顕微鏡で観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は立体構造解析のための条件検討に多くの時間と労力をさくことになった。来年度は、本年度の結果を生かし、クライオ電子顕微鏡による観察、データ収集が多くなる予定である。そのため来年度に向けて、一部予算を残し、クライオ電子顕微鏡の使用料や学会での成果発表、解析PCに充てる予定である。
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