光活性化アデニル酸シクラーゼは、情報伝達物質(cAMP)の生産を光で制御できる生体タンパク質で、生体内での光スイッチとして医学的な応用が期待される分子である。また、ランソウ由来の光活性化アデニル酸シクラーゼ(OaPAC)における原子レベルでの構造・機能解明に成功した。本研究ではOaPACの光活性化メカニズムの構造科学的解明を基に、光制御の応用展開、酵素ドメイン改変によるcGMP光産生酵素の創出や発生学的疾病の機構解明、さらに光遺伝学による神経回路形成疾患などの基礎医学的研究を目指す。 今回は、結晶においてX線による構造変化をとらえるために-180度でのスペクトルを測定してみたところ、溶液とは異なった二相性を示すスペクトルを捉え、さらに、光活性化前後でのBLUFドメインとアデニル酸シクラーゼ ( AC )ドメインのCαを重ね合わせたところ、BLUFドメイン間ではわずかながら変化していることが明らかになった。 また、結晶状態においても青色光を照射することにより、cAMP活性を保持しているということが明らかとなった。更に、Gln48の側鎖とフラビンN5の水素結合ネットワーク形成の変化により、光エネルギーがアデニル酸シクラーゼ活性へと伝わっている機構を明らかにした。 さらに、変異体作製においてFMNとRoFの構造類似性を基に構造から変異体を作成したが、いずれの変異においても活性を示さず、FMNとRoFでは電子伝達が異なるためにアデニル酸シクラーゼ活性を持たなかったのではないかと考えられる。今後、他のフラビンであるRoFMNまたはRoFADを用いることでOaPACの励起波長改変を目指す。 また、バイオインフォマティクスの手法を用いてグアニル酸シクラーゼ活性をもつOaPACの作製を試み、さらにはHEK細胞での発現を確認する予定である。
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